第四話 凶か吉か 3

「このまま放置じゃぁか……」


 リーダーはう~むと悩み出した。すると、何か良いアイデアが思い浮かんだのかシエナに向き直った。


「そういえば、テイムのスキル使えたよな?」


「発動は出来るけど成功するかは分からないですよ」


 そう言いながらシエナは一匹の前まで歩いてきた。

 一匹はすぐに身構えるも、相手に攻撃されないよう殺気は抑え、今から何をしようとしているのか思案を巡らせた。


「……おぬしはこの状況どう思うかの?」


「魔法を使うか何かだと思う。けど……」


 一匹とスライムはリーダー達を見ながら会話をし、目を離さないようにしている。

 森のざわめきや、近くに川があるのだろう水流の音がしばしば聞こえてくる。


「けど?」


「一番厄介なのは“テイム”っていうスキル」


「テイム……」


 一匹は神妙な顔つきになり、視線をリーダー達の足下まで下げた。


(確かに……テイムのスキルはわしら魔物にとって危険なものじゃ)


 一般的にはスキルレベルが上がればテイムしやすくなるのだが、魔物から見れば一種の従属――人族の言う奴隷のようなものと同等の代物なのだ。言わば奴隷刻印を刻むための魔法――テイムイコール精神支配と、なっている。

 故に、知性ありし者達は我が身を守るため人族との接触を極端に避け、常に警戒しているのだ。


「――汝、万物を滅する我が癒やしとなれ。魔物調教エクスメロンノ


 ーー刹那、一匹はすぐさま反応して後退した。

 スライムもあの一瞬で反応して避けたのだろう。隣にスライムがいた。

 一匹とスライムはテイムのスキルを放った者を睨んだ。シエナはスライム達の鋭い眼光に臆し一歩後退した。


「ひっ……ムリですムリです。わたしにはムリですぅ!」


「……やっぱり他のスライムと違って知力が高い上に、威圧まで使えるのか」


 リーダーは冷静にスライムを分析した。


(手前のスライムも知力は高いがそれほど脅威では無さそうだが、問題は奥にいるスライムだな。あれの方が断然にそこいらにいる魔物より


「やはり使ってきたの」


「そうだね。攻撃してきた以上私たちもけど、どうする?」


「そうじゃの……ここは一旦――っ!」


 突然リーダーが剣を振りかぶり襲ってきた。一匹は突然すぎて一瞬反応が遅れてしまった。


 ーーいいかい、クロ? 戦場では、一瞬の判断で負けることも勝つことも出来る。

 ーー分かっとるわい。必ず帰ってくるからの

 

 一匹は懐かしい記憶を思い出した。


(あの時、わしが油断したせいで主は死んだっ……もうこんな思いはしたくないのじゃ!)


 そう叫んだ途端一匹の頭上に影が落ちた。


 ……キーン。

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