第四話 凶か吉か 4
一匹は驚きの表情を浮かべながら影を目で追った。
リーダーの剣と打ち合いになった影――投擲された短剣はリーダーの剣によって弾かれ木に刺さった。
「くっ……だれだ!」
リーダーはスライムの奥にある人影を見据えながら言った。
「いえいえ、私。怪しい者ではありませんよ」
人影は日の当たるところまで歩き、その姿を現した。一匹とスライムの間を通り抜けてきた人影はこんなことを言った。
「ただまあ、ちょっと横やりを入れてみたかっただけですよ」
そう言いながら、その爽やか風イケメンはニヤリと笑った。
目は瞑っており口元には笑みをたたえている。極めつきはリーダーよりも背が高いのだ。リーダーの身長は一七八センチメートルあり、それなりには高いのだがこの爽やか風イケメンはリーダーの顔一つ分ほど大きいのだ。
その身長さあってのことか、リーダーは爽やか風イケメンに見下ろされる形になっていた。
「横やりだと?」
「ええ、まあ。面白そうなことをしているなと思ってね」
一匹は予想外の人物に身震いをおこしながら、ぎこちなくスライムの方に視線を向けた。
(……ま、まずい。あやつ、わしの知り合いと魔力の波長がよく似ておる……もしや本人か? いや、そもそもここが元居た世界と同じかどうかもわからんのじゃ。そんな偶然はいらないのじゃ!)
一匹はスライムに目で合図を送ると――駆け出した。一匹に続きスライムも走り出し一瞬で姿をくらました。
「っふふ。ほら、あなたが遅いから逃げちゃいましたよ」
「そりゃあんたが横やりを入れて来たからだろ」
リーダーは爽やか風イケメンを見据えながら言った。
「……追わなくて良いんですか? 見失っちゃいますよ?」
リーダーは冷や汗を流しながらその場に立ち止まっている。否、動いてはいけない気がするのだ。
リーダーの直感があいつに背を向けてはだめだと言っているのだ。
その直感を信じ、爽やか風イケメンから目を離さず仲間達のもとまで後退した。
「どうするっスカ?」
「スライムは諦めますか?」
マルクに続きシエナも緊張の面持ちで言った。マーサは剣を構え周囲を警戒しながらたたずんでいる。
(……退いた方が良いのだろうが、そう簡単に逃がしてくれそうもないんだよな……)
すると今まで黙っていた爽やか風イケメンが白々しく訊いてきた。
「……まあ別に、私横やりを入れただけであなた方と戦うつもりはないんですけどね」
「な――おい!」
カルマが反射的に訊くよりも早く、爽やか風イケメンは姿を消していた。
取り残されたカルマ達は何が何やら分からず、しばらくそのまま立っていた。
日が昇りだした。カルマは眩しそうに目を細めながら太陽を見た。
ふっと視線を下げ、しばらく黙っていたが振り返り仲間達を見るとため息交じりに言った。
「……テントを片付けろ。帰るぞ」
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