第二話 新たな光に潜む影 6
水弾は火炎ウルフのおでこ目掛けて飛んでいき、命中――蒸発した。こうなることは既に分かっていたのだが足止め程度にはなるだろうかと思い放った水弾は、一匹の思い通りにはいかなかった。
蒸発した水蒸気は火炎ウルフの進行方向に出現し、空を切るように飛び出てきた。
敵なのに格好いい登場みたいになってしまった。
「――
一匹の数メートル上空から放たれた魔法が、まあまあのスピードで火炎ウルフへ飛んでいった。
氷弾は細長く、槍のように鋭く形状が変化し――先頭にいた火炎ウルフの頭蓋に浅く突き刺さった。
先頭の火炎ウルフはパタリと横に倒れ、死んではいなかったものの全身を痙攣させていた。
「……ぉぉ」
一匹はスライムの魔法に感心して、思わず声を漏らした。
だが感心している場合ではない。今ので倒せたのは先頭の一体だけだ、まだ六も残っている。
一匹はスライムに目配せをすると、火炎ウルフに向かって駆け出した。
一匹は敵の攻撃を躱しつつ攪乱した。一匹が敵を引きつけている隙に、スライムが魔法で確実に一体ずつ仕留めている。
「はぁはぁ……よし」
残り一体となった。周りには倒した火炎ウルフの魔石が散らばってドロップしている。
一匹にはもう(飛び)走りまわる体力は残っていなかった。かくいうスライムも残り魔力が心許ない、一発なら打てるが二発目を命中させる自信がない。
一匹と火炎ウルフは互いに睨み合いながら牽制している。
一匹はジリジリと間合いを少しずつ詰めていく。火炎ウルフは一匹の背中に回り込もうと、一匹の周りをゆっくりと進んでいる。
五メートル……三メートル、二メートル……一メートル。
お互いの距離が残り僅かとなったところで、お互い距離を一気に詰めた。が、火炎ウルフの方が少し早く、爪を一匹に向け飛びかかってきた。
敵はもう1スライムいるのに……
「
スライムの放った氷弾は、見事に火炎ウルフの脳天を貫いた。
火炎ウルフは音を立てて倒れ、魔石だけを残して消えた。
「お、終わったのじゃ~」
「疲れたよ~」
一匹とスライムは溜まっていた疲労がでて、その場に倒れこんだ。(ぺちゃっと平べったく水溜まりのようになっている)
お互い顔を合わせ、楽しくてつい笑った。
少し休んだら火炎ウルフの魔石を回収しに森の中を少し歩いた。
全部で魔石は七つ回収でき、魔力回復のため一匹とスライムは魔石を二つずつ吸収し、余った魔石はスライムが頭の上に乗っけた。
「それ……落としそうじゃが、大丈夫かの?」
「んふ~? 多分」
意図的ではないのだろうがスライムはかわいく微笑みながら言った。
一匹はスライムのかわいさに思わず見惚れてしまいそうになるが「多分じゃあまり信用性に欠けるんじゃがな……」と頭の中でツッコミを入れ落ち着いた。
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