第三話 魔鉱石の力

 しばらく(飛び)歩くと目的の洞窟に着いた。流石に真夜中なだけあり一匹だけで見つけるにはほぼ不可能だった。

 スライムに案内され洞窟内に入っていくと、ある一カ所から光が溢れていることに気がついた。


「あの光は何なのじゃ?」


「あれが目的地だよ」


「え?」


 一匹が何かを言おうとしたが、漏れ出ていた光に近づく方が早く、その先の言葉は出てこなかった。

 近づいてみると光が漏れていた穴はサッカーボールほどの大きさしかなかった。スライムの平均的な大きさもそのくらいなので、スライムにとっては難なく通れる。


「ふぬぬ」


 ただ一匹にしては少し小さかったようで、なんとか通り抜けることが出来たがもう少しで洞窟の一部になるところだった。


「ふふふ、大丈夫?」


「う、うむ……これは、すごいの」


 一匹ははずかしかったのか軽く頷くと目の前の景色を見て驚いた。

 そこには魔鉱石が至る所に埋まっていた。

 魔鉱石は本来、魔鉱石のある特性故少量しか見つけることが出来ないのだが、ここには見渡すだけで魔鉱石の姿を捉えることが出来てしまう。


「普通はこんあいっぱいあるはずないよね? 前にね、この洞窟に迷い込んだときにたまたま見つけたんだ」


 スライムはこの場所を見つけたときのことを一匹に話した。一匹はスライムの話を聞きながら岩と岩の間に埋まっている魔鉱石を眺めている。


(……こうして、掘られる前の魔鉱石を見るのは初めてかの)


 一三九九年生きていた。とは言っても、元々はドラゴンだったのでこうして生の魔鉱石を見る事ができ、一匹はなんだか嬉しそうにしていた。


(この世界には、まだわしの知らないことがたくさんありそうじゃの……いや、ここが元いた世界と同じとは限らないのか)


「……い……ねえ? 聞いてる?」


「お、おお。聞いておったぞ、ほほ」


 一匹は自分の世界に入りきってしまっていたようだ。スライムに声をかけられ戻ってくることが出来た。


「そ、そうじゃ。魔鉱石を取りに来たまでは良いのじゃが、どうやって持って帰るのかの?」


 一匹は分かりやすく話題を変えた。スライムは話題転換のことを咎めることもなく、一匹の疑問に答えた。


「こうやって……持って帰るの」


「なんか……うむ、落としそうじゃな」


 スライムは魔鉱石を手際良く採掘すると自身の頭の上? に乗せた。魔鉱石を載せた勢いでぷるぷるのスライムボディは一瞬へこみ、器のようになった。

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