第二話 新たな光に潜む影 5
一匹は再び水弾(固定)を撃った。今度は火炎ウルフ目掛けてではなく、前足に向かって大量に放った。
水弾の使用MPはたったの二なので、今の総MPから考えると十発は連射できるということになる。そして二発はさっき撃ったので残り八発。今撃ったのを足し引きすると、残り三発。つまり六MPしか残っていない。
当然火炎ウルフの熱気は全身に纏わり付いているので、前足に触れる前に全て水蒸気へと変換された。が今回は水弾の数が多く、水蒸気。つまり『霧』が火炎ウルフの前に立ちはだかりつつあった。
(よし。まずは一つ目じゃ!)
一匹は意図的に霧を発生させ、素早くこの場所から移動した。
(……あやつから訊いておいて正解じゃったの。さ、次じゃ!)
一匹は過去、前世時代の
次に一匹は逃走のスキルを使い、洞窟の方へと向かった。
(しっかりと追ってきておるの)
一匹は火炎ウルフが追ってきていることを確認すると、(飛び)走るスピードを少し速めた。
火炎ウルフ達はじりじりと一匹に近づいてくる。
(よし。この辺で良いかの)
一匹は木の上にスライムが居ることを確認すると、スライムの居る木の真下に止まった。
後ろを振り返ると火炎ウルフの影が見え、追いついてきた――と思ったが、火炎ウルフではなく、火の玉がかなりの速さで追ってきていた。
(な、なぬぅぅぅぅ??!!!)
一匹は驚いた反動で、長方形になったり円錐型に身体が反応し伸びた。
飛来してきた火の玉を一匹は間一髪で躱すことに成功し、目的地を失った火の玉はスライムが乗っている木を抜け、大樹に命中した。
一匹とスライムは火の玉を目で追っており、命中した大樹は火花を散らしながら燃え始めていた。やがて火は炎へと変わりその大樹を燃やし尽くした。
「なっ……」
一匹とスライムはその光景を眺めていることしか出来なかった。
それは一瞬の出来事であり、瞬きを許すことも出来ないほどの燃焼スピードだったのだ。
大樹が燃え散った後、視線を戻すと次こそ正真正銘。火炎ウルフが駆けてきていた。
一匹は汗が垂れそうな程、緊張していた。だがそんなこととは裏腹に、火炎ウルフへの興味の方が思考内では勝っていた。
(あの炎は……生きておるのか? あんなにも早く燃やすには、炎が生きていない限り無理そうな気がするの……)
この世界の植物は微量ながらも魔力を有している。そのため、炎は食材とする草や木から魔力を吸い取り、燃焼エネルギーに変換しているのだ。
つまり自然の摂理というやつだな。
植物にも少なからず生命が宿っているが、人族や魔物のように意思を兼ね備えているかは定かではない。
「水弾(固定)!!」
あまりにも火炎ウルフとの距離が詰まっていたので、すかさず魔法を放った。
残り二発。
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