第五話 人族の知り合い 2
そうと決まれば早速、スライムの案内により人族の里に向かうことになった。
道中、多少魔物と遭遇したがそれほど脅威ではなかった。時間にすれば数分、道のりにすれば数十メートル。
一匹とスライムは小さな村に着いた。村の周囲は柵で囲まれており一応壁かなんかのつもりなのだろう。スライムには関係のないことだが。柵の隙間からスルリと村の中に侵入した。
人を探すのならば一番安全な村の中心だろうということになり、民家の壁を伝いながら中心へ(飛び)歩き進むことになった。
村の中心へ進めば進むほど子ども達の声がたくさん聞こえてくる。大人達もそこら中で会話しているのか話し声が良く聞こえてきた。
一方で一匹とスライムは人族に見つからないからビクビクしながら慎重に、ナメクジのように這って前進していた。
「……これ、もしばれたらどうなるんじゃ?」
一匹は恐る恐るスライムに尋ねた。
「まあ、まず。殺されるね」
スライムは肯定するかのような笑顔でにこやかと言った。一匹は「そんな……」と思いながらショックを隠せきれない様子で落ち込んだ。
「……さっきの冒険者達にだって、私たちは運が良かっただけで、もしかしたら殺されてたかもしれないんだよ? そう考えれば同じだよ。人族も魔物も……」
最後の言葉だけ小さく一匹は聞き取れなかったが今は気にせず、這うことに集中した。
「そう、じゃの……」
二匹の間に沈黙が下りた、言葉を交わすことなく黙々と這い続けた。
村の子ども達の声だけがよく頭に響き、否応なしにここは平和なんだなと一匹は感じ取った。前の世界とこの世界が同じかは分からないが、少なくともこれだけ子ども達が遊びまわるような声は、光景は見たことがない。
一匹はいつの間にか立ち止まっていた。
「……ん? どうしたの?」
「いや、なんでもないんじゃ。ちょっとうらやましかっただけかの……」
スライムは頭に「?」を浮かべているようだったけど一匹は説明することもなく、静かに子ども達を見続けた。
――目が合った。
遊んでいた子どもの一人と目が合ってしまった。一匹は思わず屈み、隠れた……つもりだ。
子ども達の声が次第に大きくなった。
(まずいのじゃ!)
「君、逃げるよ」
一匹が言うよりかも早くスライムから声が掛かった。一匹とスライムは今いる場所から一度抜け、住民達に姿を見せながら駆けた。
(あの子ども……)
一匹は先程目が合った子どもにどことなく違和感を感じていた。普通の子どもとは何かが違う、というか魔力の流れが明らかに子どものソレではなかった。
一匹は逃げながらその子どもを見ていたが、結局魔力の流れがおかしいこと以外なにも分からなかった。
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