第五話 人族の知り合い 3

 一匹とスライムは民家と民間の間に隙間があるのを見つけ、そこに飛び込んだ。


「……ねぇ、君。あんまり見つかるようなことしたらダメだよ?」


「それは、なんというか。申し訳ないの」


「まあ、追ってこなかったから良かったけど飛び道具でも使われてたら危なかったんだよ?」


 一匹は子どもとはいえ人族に見つかってしまったことへの謝罪をした。

 それからスライムは村の状況を確認するため低姿勢になりながら外を窺った。一匹はその間少し暇なので寝転がろうと思ったのだが、


「……? なんじゃ、この紙?」


 一匹は草ではない、ざらざらとした感覚に驚き足下(スライムに足ないけど)を見ると、角が少し破れている羊皮紙を見つけた。

 一匹は器用に持ち上げ日が当たっている場所に持っていき見た。


「これは……地図、かの?」


 森のような二等辺三角形のマークに、村を示しているのか家のようなマーク。洞窟でもあるのかトンネルのような半円のマークがいくつも描いてあった。そして、恐らく村や森の名前なのだろうが一匹には読むことが出来なかった。


「……これってここの地図?」


「おそらくの」


「もしかしたらを合わせてなんかも見てみたら面白いことが分かるかも!」


「???」


 一匹は突然の謎単語に頭が混乱した。

 スライムは興奮しているのか「フンス」といった感じで一匹のことは見ていなかった。地図は丸めて脇に挟み(スライムに脇ないけど)帰る姿勢になっていた。


「早速だけど、帰ろうか」


 それだけ言うと、外の様子を窺ってからそそくさと出て行ってしまった。一匹もスライムを見失わないように急いで追いかけた。

 少し走ると一匹はまた謎の違和感を感じた。今度はさっきの倍、いやそれ以上の何かが村の中で異変を起こしている。ちょっと振り返りあの子どもを探す。――いない。

 あの子ども以外に魔力の流れがおかしい人も見当たらない。一匹は疲れているのかと思いこれ以上詮索することは辞めてスライムについて行くことに集中した。


「――村の外には出たし、ここからは歩いて行こうか」


「そうじゃの」


 一匹は先程の違和感のことをスライムには言わず、記憶の中にだけ閉じ込めておくことにした。

 スライムは地図を取り出し、村と太陽の位置から大体の今いる場所を導き出した。それからスライム達が住んでいる山も地図に載っているようなのでそこを目指して歩き出した。

 ちなみに、スライム達が住んでいる山はこの森を一望できる高さがあるので森の中からでも山を見つけることが出来るのだ。

 一匹は何も言わず黙々とスライムの後について行った。

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