第十四話 森の異変


 今度は先程と違い、動かず周囲に目を凝らしてみる。と、一部空間が歪んでいるようなおかしな点を見つけた。


「なんじゃ?」


 不思議に思いソレに近づく。


「近づくな」


 どこからともなく聞こえた声に歩みを止める。後ろを振り返ると赤いスライムの姿があった。一匹の隣まで来るとソレを見上げながら言葉を紡ぐ。


「あれが視えてるのか?」


 どういう意味かは分からないがとりあえず一匹は視えているので頷く。赤いスライムは訝しみながらソレのことについて話し始めた。


「アレはな普通の生物、てか普通に生きてる奴らには視えねぇモノだ」


「――ようやく見つけた。ここに居たんだね」


 赤いスライムが話している途中でスライムも合流した。そしてどうやら皆ソレが視えているらしい。

 ソレに誰よりも早く気が付いたのはスライムだった。赤いスライムは物凄い殺気で目を覚まし異様な光景に目を疑い、辺りを散策していた。一匹はと言うと、普通にぐっすりと眠り起きたところに赤いスライムに出会ったと言うわけだ。


「あれは、なんなのじゃ?」


「まぁ、普通に考えれば精霊だろうな。似たようなものを見たことがあるんだが、この森を管理してる精霊が危険に晒されてんだろうよ」


「森の、精霊……」


(そういえば昔、わしの寝倉に来る精霊が居ったのぉ。あやつは今、何をしておるのかの~……)


 懐かしい友のことを思い出し感慨に耽る。


「もし、その精霊が居なくなったらこの森はどうなるのじゃ……?」


「…………最悪の場合、この森は荒れ地にになるだろうな。あとここに住んでた魔物が住み家を失い、近隣の村を襲いはじめる。そんな感じだな」


 解決方法はある。しかし、一歩間違えれば一匹達も危険な目に遭うかも知れない。赤いスライムからすれば二匹は命の恩人、いや命の恩スライムだ。自ら危険な目に会いに行く必要はない。そう判断するとソレとは逆方向へ足を向けた(スライムに足ないけど)


「ぬ? どこに行くのじゃ?」


「わざわざあれに首を突っ込むつもりはねぇ。この森から離れるぞ」


「そうじゃの」


 一つ返事で一匹が了承するとスライムにも返事を貰うため目を向けた。


「そう、だね。うん、行こうか」


 なぜかたどたどしい。が、了承を貰ったため一匹達はこの森から離れるべく進み始めた。

 ──かなり、歩いたはずだ。一向に辺りの景色に変化が訪れない。一瞬、また惑わしラビットの縄張りに入ってしまったのかと思いもしたが、それにしては魔物の気配はなくシンとしている。一匹はだんだんと頭を捻らせてきていた。道中一切誰も話さず、黙々と歩いていたのだ。気まずさが出て来てしまっている。そこへ切り裂くようにスライムが発した。


「……早く助けに行かないと、終わっちゃう」


 ボソッと呟いたその言葉に真っ先に反応したのは意外にも赤いスライムだった。


「……場所は分かるか?」


 切羽詰まったように訊くと、スライムは無言で頷いた。一匹は何が何のことなのか訳が分からずただボケーッとしている。


「君、行くよ。着いてきて!」

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