第十四話 森の異変 2

 一匹だけ訳も分からず一緒に走っていた。どこに向かっているのかは教えて貰ったが、それ以外のことがさっぱり分からなかった。

 スライムが先導し、その後ろを一匹、赤いスライムの順で駆けている。


「こっち!」


 そう言いながらしれっと『水流操作(固定)』で高く舞い上がる。一匹は咄嗟のことにあたふたするがすぐに追いかける。赤いスライムもパッパと浮かび上がった。崖を飛び越え、どんどん森の奥に進んでいく。


「あれだ! お前らちょっと離れとけ」


 赤いスライムが言い、一匹とスライムは少し距離をとる。すかさず赤いスライムは魔法を放った。


「『炎弾』」


 空間の裂け目に直撃しスライムがなんとか通れる幅まで広がった。今度は赤いスライムを先頭にその裂け目へと飛び込む。


「ここは……」


「君! こっちだよ」


 一匹が驚いている暇もなく先へと進み始めた。

 景色は今まで通り森の中と変わらない。しかし先程までの森とは少し、違和感がある。


「ここは精霊の森って言って、魔力が濃いの。苦しかったら言ってね」


「なるほどの。今のところは大丈夫そうじゃ」


「ならよかった。深部まで行くから遅れないでね」


「うむ」


 精霊の森。それは人や魔物が住まう世界とは少し違う世界、異界とでも言うべきか。魔力の濃度が濃く、魔法耐性が無い者が足を踏み入れれば気分を害する恐れがある。こう言う場所は基本的に危険区域となり、進入を禁止されている。まあ、滅多に入ることもないが。


「ところで、なんでおぬしらは精霊の森ここへの入り方を知っておるのじゃ?」


 先を急ぎながらふと疑問に思ったことを口にする。


「私はあの場所に入り口があることを知識として知っていたの」


「俺は前に誤って入ったことがあったからだな」


 なんとでもなくあっさり言う二匹になるほどのと素直に一匹は頷いた。

 ――と、目的の場所が近づいてきたのか周囲の景色に違和感が生じ始めた。


「これは、なんじゃ?」


「もうすぐで、精霊に会えるよ」


 その言葉を皮切りに一瞬で周囲の景色が一変する。先歩のまでののどかな森とは変わり、炎が燃え広がる山火事の場面へと早変わりした。


「やっぱりか! 精霊を探せ!」


「早くしないと手遅れになるよ!」


 みな周囲に目を配らせ辺りを見回す。と赤いスライムが声を上げた。


「いたぞ! あっちだ」


 赤いスライムの後を追い炎の中を突き進もうとするが、勢いが凄まじく思うように進めない。


「俺は先に行ってる! お前らはそこで待っててくれ」


「えっ、ちょちょっと!」


 スライムが何かを言う暇もなくも炎を突っ切り行ってしまった。

 赤いスライムには呪いで付いた固定スキル『炎無効』がある。そのおかげで火の中でもダメージを負うことなく活動ができるのだ。 

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