第十四話 森の異変 3
「この炎、さすがにわしらにはムリそうじゃないかの」
「私たちじゃすぐ死んじゃうね」
スライムという種族には固定スキル『水無効』が常備されている。このおかげで水の中でも息ができるのだが、さすがに火の中となれば別だ。息すら、むしろダメージが入ってしまう。
赤いスライムが解決すればこの炎も消えすぐに向かうことは出来るが、もし上手くいかなかった場合、炎への耐性がない一匹とスライムは戻ってくるまでに瀕死状態へ陥ることもありかねない。
「どうするのじゃ? ここで待っておくのかの?」
(私だけならスキル『微回復』でなんとか持つと思うけど……ううん。死なすことは絶対にさせない。私が守るんだから)
と、突然一匹が魔法を放った。水弾は放物線を描くように炎へと被さる。しかし一瞬勢いが弱まっただけでまたすぐに勢いが戻ってしまう。
「むむ……やはりわしの水弾じゃ威力が足りぬの」
(水……? 火の勢いが一瞬弱くなった?)
「のう、おぬしの
ここでスライムは疑問を覚えた。なぜ水ではなく氷と一匹は言ったのか。水であれば一匹の放つ水弾よりも威力があるのは確かだ。いや、もしかしたらスライムがやたら氷弾ばかり使うので水弾を持っていないと考えたのかも知れない。もちろん『魔オール弾』の中で一番得意としているのは氷弾だ。形を変え氷槍にすることも出来るので多様な使い方が出来る。
話がそれてしまった。スライムは考えをまとめようと頭を振り余計な考えを断ち切った。
「……む。これでもダメとは」
スライムが考えを巡らせている間、一匹は一匹でこの炎をどうにか出来ないかと今所持している魔法を手当たり次第に使っていた。とはいっても水弾、浄水、水流操作しか魔法はないのだが。
浄水は水をきれいにする魔法だ。火にはそもそも使えなかった。水流操作は言葉通りの魔法だが、火の手があちらこちらにあり消しても消してもすぐに元通り。まるで意味がなかった。
「の……」
「『氷弾』」
困り果てた一匹がスライムに声を掛けようとしたところ、突然魔法を放ち驚いた。
しかも驚いたことに、氷弾が通った後には火が再発せず氷の道が出来ていたのだ。
「お、おお。やはりおぬしの氷弾はすごいのぉ」
一匹の想像通りの結果になり、うんうんと頷く。そんな一匹とは裏腹にスライムはポカンとしていた。
「……なんで
最もな疑問だ。普通なら氷は暑ければ溶けてしまう。だが、今の光景は違う。溶けるどころか火を消火し、地面を凍らせてしまった。
だからこそ思ったのだ。
「なぜ火に氷が通るのか、の。そうじゃの…………」
一匹は神妙な面持ちになり、ゆっくりと口を開いた。
「わしも分からん」
「へ?」
思わず素っ頓狂な声を上げるスライムに慌てて取り繕ったかのように言葉を合わせた。
「そうじゃの……原理は分からないんじゃがの、むかし氷で火を消しよったやつがおったんじゃよ。わしには氷の魔法は使えぬし、おぬしはよく氷弾を使っておったじゃろ? ならいけそうじゃのぉと思ったんじゃ」
(まだ……私の知らない知識があったんだ)
スライムは一匹の説明を聞いてワクワクしていた。
「おぬし、行くぞ」
「そうだね」
切り開かれた道を見て今度は一匹がスライムを誘った。
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