第一話 不幸と出会い 3
そう言うと、一匹は森を一直線に徘徊し始めた。途中で見知った木の実を発見した。名称は“ローズヒップ”という、赤く
「おお! これは確か、ローズヒップ! 主に食用の果実じゃったな」
(それに、人族の店に持って行けば買い取って貰えるらしいしのぉ。取っておいて損は無いの)
一匹はローズヒップを『捕食』した。すると体内でローズヒップが解けていった。吸収し終わるとまた、あの機械的な声が頭に響いた。
『ローズヒップ 食用 商人に売れば銀貨一枚から銀貨三枚はくだらない代物です』
(ふむ。聞いていた通りじゃな、このまま全部集めようかの)
その場にあったローズヒップは一匹が一つ残らず『捕食』した。もちろん捕食したローズヒップは体内のアイテム保管用のスペースに保管された。ある程度回収すると一匹はまた道なき道を徘徊し始めた。途中、ゴブリンを何体か見かけたがスルーして難なく回避。
「ハァハァ……。一向に、森から……出られないのは、なぜじゃ!」
一時間くらい経っただろうか、景色はずっと森のまま。途中川や岩を見かけたりもしたが、あるのは壮大な森と地面のみ……。一匹は歩くのに(飛び歩き)に疲れたので、岩陰に行き休憩にした。
「ふぅ~。やはり空を飛びたいの、空を飛べばすぐにこんな森から出られるのじゃが……」
一匹はそんな思考もよそに色々考え始めた。一つはどうやってこの森から抜け出すか、二つ目は……このままでは日が暮れてしまう! 早いとこ寝床か、安全な場所にたどり着かなければならない。と言っても太陽はまだ真上くらいの位置なので日が暮れるのはまだ先だ。
「そういえば、スライムは食事が必要じゃったか?」
一匹は自問自答し始めた。――結局結論は出ず、再び森を彷徨い(飛び)歩き出した。もう見慣れた光景をただ当てもなく徘徊する、どんな地獄だよとか思いつつ一匹は(飛び)歩き続けた。
――また何かの実を見つけた。それは木の枝にぶら下がっており、黄色い実をいくつも付けていた。スライムには味覚がないので捕食しても意味が無いだろうと思いつつも、一匹はこれを捕食して見ることにした。『捕食(固定)』
「これはいったいなんの実かの?」
『ウェモン 食用 実は薄黄色で酸っぱさがあります』
なんか……、雑じゃの。
一匹は戸惑いつつも『ウェモン』を『捕食』していった。ある程度回収し終えると、次は何をしようかと考えた。
「とりあえずの第一目標はこの森を抜けることじゃな。あとは、出来れば人族の街も探しておきたいの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます