第十話 同類確保? 2

 ふと赤いスライムを見やると何も言わず暗闇の中に消えていった。


「……早く逃げた方が良いって言ってたよね」


「ぬ、そうじゃな」


 一匹とスライムは素直に従いここから脱出を試みた。先程通ってきた換気口から建物の外、地上に出ることができた。が、景色がおかしかった。


「のう……確かここは地図に載っておらんのじゃったな」


「その、はずだけど」


 そこには村があった。比喩でもなくそのまんまの意味で村が、そこにあった。

 特段これといって他の村と大差ない。空も見えれば、大人子どもも多く賑わっている。しかし、一つだけ他の村と違う点があった。それは、この村の全員が帯剣していることだ。大人はまだしも、小さな子どもまでもがナイフ、剣、弓、槍を携えていた。


「……なぜこのような場所が地図に載っておらんのじゃ」


 一匹とスライムは壁の近くに移動した。

 ――と、その時だった。爆発音と共に地面にぽっかりと穴が空いた。

 突然の事態に村人は驚き――はせず、各々武器を構え始めた。

 直径二メートルほどの穴が空くと炎柱が立ち上った。しばらくすると炎柱の前に一匹の魔物が現れた。その魔物を見た瞬間一匹とスライムは顔を見合わせてあ然とした。それもそのはず、ついさっき別れたあの赤いスライムだったのだ。


「――消えろ消えろ消えろ!! 闇の炎で地獄へ葬ってやる!!」


 そう言うと炎弾、闇黒弾を無差別に周囲へ放ち始めた。スライムと一匹の方にも例外なく飛来してきたのでひょいひょいと躱す。建物に被弾すると破損した壁などが辺りへ崩れてくる。村人たちは大盾で防ぎ、剣で魔法を切っていた。


「……あの剣、もしや属性剣か?」


「ぞくせいけん?」


 一匹が思わず呟くと傍に居たスライムから疑問を投げかけられた。


「属性剣はの、そのまんまの意味じゃが剣に属性を付与されたモノのことをそう呼ぶのじゃ。して効果が、付与された属性と同じ属性の攻撃を吸収することが出来るのじゃ」


「ならあの剣持ってる人には火属性の魔法が通じないってこと?」


「うむ。ただ他の属性の攻撃を受けると……ほら、ああなるのじゃ」


 属性剣を持っていた人は火炎弾を切ったあと勢い余り闇黒弾にまで剣先を伸ばした。その結果火属性を帯びた属性剣が闇属性の闇黒弾と反発し後方へ吹き飛ばされてしまった。闇黒弾は跳ね返るようにして地面へ軌道を変え着弾する。


「一応防ぐことは出来るけど拾いに行く間にやられちゃうのね」


「そういうことじゃ」


 剣と所有者の距離は約十メートル。これでは一度防げても次が無い。ジ、エンドだ。


「でもわざわざそんな物使わなくても、この方が楽だとおもうんだけど」


 そう言いながらこちらに飛来してきた火炎弾を水弾で打ち消す。さらに、闇黒弾を光弾で打ち消した。

 一匹は驚きのあまり目が点になってしまった。

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