第十話 同類確保? 3
「…………普通は出来ないと思うんじゃが」
「そうなの?」
スライムは真顔で答え一切の苦も無く、飛来してくる火炎弾も闇黒弾も次々に打ち消していく。
「……というか一体何発打てるのじゃ?!! 魔力量多くないかの!」
もう既に三十は軽く越えているだろうに一向に疲れも見えなければ精度の乱れもない。
普通のスライムならば精々五、六発が限界だ。魔力量は個体差こそあるがそこまで大きく前後することはあまりない。スライムの魔力量は平均的に十五~二十あたりだ。一匹に言わせれば平均も平均の一般スライムと言えよう。ただ知能は他と違って高いが。
「そんなことより、どうする?」
そう言いながらスライムはこの騒動の根源でもある赤いスライムに視線を向ける。
――突如巨大な火炎弾? が赤いスライムに被弾した。周りの土や砂が巻き上がり一時的に姿が見えなくなった。
一匹は魔法が飛んできた方向に目を向ける。そこにはさきほどの会場内でオークションの司会をしていた人と、あきらかに普通の冒険者とは違う鎧を身にまとった騎士が佇んでいた。
砂埃が収まると炎を吸収した、いや炎を纏った姿の赤いスライムがいた。司会の人は冷静に言葉紡ぐ。
「『止まりなさい!』」
一瞬赤いスライムが痙攣したかと思うと動きが止まった。
司会の人は奴隷紋を行使し命令を効かせたのだ。一時的にでも動きは止まった、騎士はその背格好とは裏腹に魔法を発動させた。
魔法陣から投網が出現し赤いスライムに襲いかかる――が途中で威力を急激に落とし地面へ落下した。投網からは冷気が漂い、あたかも地面に霜が降りたかのような白さとなった。一気に視線が赤いスライムからスライムと一匹へと移り変わる。だがそれは一瞬のことで一匹達を無視すると再び魔法を放った。同じようにスライムも再び氷弾を放ち投網に命中させる。
「なんなんだあのスライムは! なぜ邪魔をする!」
今度はちゃんとスライムのことを認識したようだ。先程は見間違えかとでも思ったのだろう。スライムなど眼中に無いようだった。
そうこうしているうちに赤いスライムが再び動き始めた。一匹は咄嗟にまずいと思いスライムを連れ木の後ろに隠れる。その直後今度は大きめの火炎弾が放たれた。
「秘剣――
「な…………」
先程までただの属性剣とは違う。これは伝説の剣の一振り……
「あれはまさか――!」
一匹が叫ぶと同時、騎士は兜を脱ぎ捨て嘴を吊り上げると、剣を両手で上段に構えた。一気に地面を蹴り駆けると左上から右下へと薙いだ。
「……」
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