第十話 同類確保?


「ぬ、そういえばどうして換気口に入ったのじゃ?」


 ふと思い出し尋ねてみる。するとスライムも思い出したのか両手でポンとすると


「着いてきて」


 とだけ言った。

 しばらく進むと妙に薄暗い空間に出た。スライムには念のためと言われ魔物隠形を掛けられている。

 薄暗いが目を凝らせば見えないこともない。辺りを見渡すと檻が左右に並んでいた。一つの檻の中をよく見てみると手脚や首を鎖で繋がれた狼人族の姿があった。

 また別の檻の中を覗くと片翼のない火炎鳥フレイムバードの姿もあった。


「これは……」


「これから売られる奴隷達だね……あ、いた。君、こっち」


(……それにしても魔力の密度が濃くないかの? すべての生物に魔力が宿っているとは言っても、たったこれだけの数からできる魔力はたかが知れてるじゃろうに)

 

 スライムに促され着いていくと一つの檻の前で足を止めた。


「? のぅ、ここら一帯妙に濃くないかの?」


 一匹はスライムにだけ聞こえるように小声で言った、つもりだったが別のモノを反応させてしまった。


「……?! だれか、いるのか」


(しまっ――)


 一匹とスライムは後退し周囲を伺った、が人の気配はしなかった。

 と、突然先程の檻から爆発が響いた。驚いてそちらを見やると鉄格子が紅く熱を帯び燃えている。しかもいくら待っても溶ける気配もなければ燃え付けることもなかった。


「……あの檻、魔力を吸収してる」


 スライムが異変の正体に気付きそう呟く。炎の明るさで檻の中が照らされ、一匹はその奴隷に目を見開いた。


「……スライム?!」


 紅い真っ赤なスライム。左目を覆うようにして蒼い炎が纏わり付いている。

 一匹はこんな状況にも関わらず、なぜか懐かしさを覚えた。だがそれはほんの一瞬のことですぐに意識を切り替えられた。

 スライムが何を思ったのか水弾を檻に向けて放ったのだ。限界まで熱されていた鉄格子は突然の温度変化に耐えられず、爆発し霧散した。

 スライムは赤いスライムに近付きながら魔物隠形を解いた。赤いスライムは何もない空間から突如現れた二匹のスライムに驚きを隠せない様子で呆然と眺めている。赤いスライムは何も言わずスタスタと檻から這い出て去って行こうとした。


「……助けたのに礼も言ってくれないの?」


「……おまえ、人みたいなこと言うんだな」


 一瞬目を丸くさせそう言った赤いスライムは一呼吸置いて言葉をつづけた。


んだ? …………まあ悪い、助かった。おまえらも早くここから逃げたほうが良いぜ」


 一匹だけがこの状況に取り残されているようで頭が混乱しかけていた。


(ここにこのスライムが居ると分かったのも謎じゃし、なぜ言葉を話せると分かっていたのかも気になるの……前から思ってはいたのじゃが、おぬしは一体……)


 一匹は声には出さず心の中にだけ留めた。

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