第二話 新たな光に潜む影 3
辺りを見回すと、すぐそばまでスライムが駆け寄ってきていた。
「えっと……大丈夫?」
「あぁ……あれ? 痛く、ない?」
「? 知らないの? 私たちスライムは粘着性と柔らかさのおかげで、物理攻撃のダメージはほぼ0なんだよ?」
(凄いの……じゃから、いくら踏み潰したりしても死なないわけじゃな)
一匹は一人納得した。一匹が新たな発見に感動しているとスライムから声が掛かった。
「ほら、早く行こう」
「う、うむ」
一匹はされるがまま、スライムについていった。しばらく(飛び)歩くと│
「ねぇ、気づいてる?」
スライムが小声でそう言った。どうやらスライムも│
「ああ、二、三体はおるじゃろうな」
一匹も声を潜めて気取られないように前を向いたまま言った。
「どうする? 逃げる、それとも戦う?」
スライムは一匹に戦う能力があるのかどうか後回しに訊いてきた。一匹は少し考えた。このままではいつか襲われるかもしれない、だが逃げたところで今度は、帰るときに襲われるかもしれない。ではどうするか
「……戦おうではないか」
一匹は額から染み出る汗を拭うように言い放った。スライムは一匹の表情を見て「分かった」と、強く頷いた。一匹は後ろから着けてきている│
(あ……そういえば今所持してるスキルは……)
一匹は今頃思い出したようだ。『索敵』も『感覚強化』のスキルもドラゴンだったときに得ていたスキル。今、一匹が持っているスキルの総数は、ドラゴン時代の1/4にも満たないのだ。
一匹は仕方なく『索敵』のスキルを獲得しようと思ったが、残念ながら取得条件を満たしておらずさらに落ち込むことになった。
「おぬしは索敵系のスキルを何か持っておるかの?」
スライムに頼るしかなかった。これで何かしらのスキルを持っていれば対策など立てれるかもしれないが、これまた残念ながらスライムも索敵系のスキルを持っていなかった。
一匹は考えていた作戦をスライムに話した。スライムに作戦を伝えると(飛び)歩くスピードを上げた。スライムは一匹から徐々に離れていく。
│
1分もしないうちにスライムの姿と共に気配がなくなった。一匹はそのことを確認すると徐々に歩みを止めた。
後ろにあった気配も一匹が止まると同じく止まり、一匹が動き出さないのを見て気配が歩み寄ってきていたのを感じた。
ジャリッ
土を踏み締める音が一匹の背中越しに伝わった。
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