第十五話 誘発と暴発 2

 突然の事態に脳の処理が追いつかず半ば混乱状態に陥る。回らぬ頭で必死に考えようとするも「?」が頭を支配してしまう。


「だ、だれか……誰かおらぬのか!」


 ようやく出た声を、大にし投げかけてみるも返ってくるのは無のみだ。それもそうだろう。なんたってのだから。

 一匹はおもむろに歩き始めた。

 考えても仕方が無い。

 考える頭はすでに終わった。

 当てなんかあるはずがない。

 ただ適当に、当てずっぽうに、ひたすら歩く。


         ◆ ◆ ◆


 一匹が目を覚ました少し後、スライムも目を覚ましていた。景色の変わりように驚き、激しく鼓動が早くなる。

 スライムには『千里眼』がある。これを使えばすぐ捜せる。


「なんで……」


 はずなのだが、同族がいない。千里眼で飛ばせる範囲内にスライムがどこにもいない。


 なぜ?


 スライムは考える。さっき何が起こったのか、みんなはどこに消えたのか。いくら考えても答えは見つからない。見える景色だけがすべてを物語っている。

 ――あぁ……私以外、助からなかったんだ。


「……みんな、ごめん。私にはムリなんだよ。みんなみたいにうまくできない」


 独り言ちる。何もない空虚へ向かって、絶望の色を滲ませながら。

 ただの独り言。返る言葉も、自己嫌悪も誰も聴いてくれやしない。

 ただ、ひたすらに。時は過ぎるのみ。


「もう……私この世界にいちゃ、いけないのかな……?」


 俯くとスライムの身体を滴るものがあった。這っていたものはやがて地面へ落ち、吸い込まれていく。


「いやだよ……私こんな世界。早く死ねば……」


 そこまで吐き捨て、今までの感情失ったかのようにため息を付くと諦めざる要因を、また独り言ちる。


「スライムにとっての忌みの証……これがある限り、私は死ねない……だから」


 ――捨てられた。

 もういやだ。このまま独りで、何十年。何百年過ごしていくのかと思うと一日一日が億劫に思えてくる。

 だからこそ、あのとき一匹に会い軽蔑されるかと思っていたがされず、戸惑いもあったが嬉しかった。こんな私を受け入れてくれるスライムがいるのだと、心から喜んだ。

 でも、もう会えない。逢えない? ……こんな終わり方で? ついさっきまで、あんなに楽しく話していたのに。


「ごめんね。ごめんね……私のせいで……私と関わったらろくなことにならないんだよ」


(あ~ぁ……こんなことになるんなら、ちゃんと私の気持ち。伝えたら良かった……)


 空を見上げ、届かぬ思いを呟く。

 太陽は燦々としているが決して暑くはなく、風も吹いていない。なにより、雲一つない晴天だ。

 こんな天気の良い日には日なたぼっこするに尽きる。

 スライムは宙を仰ぎ地面へ仰向けに倒れた。

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