第十五話 誘発と暴発 3

 ――――何時間寝ていたのだろう。いつの間にか夜の帳が下り暗闇の世界へと変わっていた。

 欠伸をしながら目を覚ました一匹は歩き始めた。


(おぬしを見つけるまでは、絶対に……)


 と、一点だけ地面の色が濃い場所があった。一匹は不思議に思い駆け寄る。

 シルエットは段々とそのものの輪郭を濃く映し出し、次第にハッキリと見えてくる。


「……!!」


(居た。いたぞ! 早く……)


 思いの外疲労が溜まっておりゆっくりとした足取りだったが、確かに距離を縮めていく。


「大丈夫か! のう! のぉ!!」


 一匹はソレを揺さぶる。しかし起きる気配はない。必死に声を掛けながらどうにか起こそうとする。一匹はふと思い立ち『水弾』を浴びせた。

 もしかしたら喉が渇いているのかも知れない。そう思ったのだ。


 バシャーン。


 ソレに当たると『水弾』は弾け周囲に水を撒き散らした。再び触れるとひんやりとした冷たさが一匹に襲いかかる。

 突然視界がぼやけ始めた。ぐらんぐらんと揺れていくと一匹は気を失った。


「――!! ――――ぃ! ――おい!」


「……? ここは……?」


 次に目を覚ますと赤いスライムがいた。さっきまで居た場所と景気が違う。一匹は不思議に思い尋ねる。


「ここは精霊の森だ」


 そう。だ。草木が生い茂り木々が立ち並んでいる。まるでおかしい。火種という火気がどこにもないのだ。


「どういうことじゃ? わしらは爆発に巻き込まれて……」


「何言ってんだ? 爆発なんて無かったぞ。それに、ほれ」


 そう言って後ろを向く。そこには精霊がいた。彼女はぺこりと頭を下げると居心地が悪そうに苦笑いを零す。


「この森を管理してる精霊のシルフィだ」


 一匹はその説明を聴いてますます訳が分からなくなっていた。そこでふとスライムの所在が気になりハッと声を上げる。


「隣にいるぞ」


 一匹の隣にはスライムが居り、完全に意識を失っていた。


「なんで目を覚まさないのじゃ?」


「覚えてないのか? 俺が先に行くからお前らはそこで待っとけって言っただろ。んで敵を片付けたから戻ってきたらこの有様だ。お前ら二人揃って何やってんだ? って俺が聞きてぇよ」


 予想外の返答が返ってき一匹は頭を悩ませる。


(どういうことじゃ? あの時確かに、わしらはこやつに追いついて応戦したはずじゃ。なのになぜ、ここにおるのじゃ?)


 と、考えても仕方がない。一匹は一度考えを打ち切ると、スライムを起こしために脳を使い始めた。


「おぬし、おぬし……のぉ!」


「やっぱ全然起きねぇな」


 どうしたものかと一匹と赤いスライムは頭を悩ました。しかし、やはり良い案は思い浮かばない。


「の、『水弾』」


 何を思ったのか『水弾』を放つ。水弾はスライムの顔面に直撃し、弾けることなくスライムボディへと吸収された。


「おまえ知らないわけじゃないよな? スライムは『水無効』のスキル持ってんの」


 そう、弾けず吸収されたのはそう言うことだ。


(……? ということはあの時のは、あやつじゃなかったのか、の?)

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