第二話 新たな光に潜む影

「良ければ…………わしに、この世界のことを教えてくれんかの?」


「……」


 【前回のあらすじ。一匹はネームドスライムに会った、だが名前を教えてはくれなかった。スライムが良い雰囲気を醸し出していたが、一匹の一言によって打ち砕かれた。】


 当然スライムは一瞬戸惑うが、すぐさま状況を理解した。だがすぐさま話そうとはせず、少し無言のまま固まった後で言った。


「……なら、一つ条件。いい?」


 一匹は戸惑うことなく頷いた。今の所この世界のことを知るには現地の魔物モンスターに訊く以外方法が思いつかなかったからだ。


「私と一緒に……旅を、して欲しいの」


「旅、かの?」


「うん。私はねいろんな所に居るの、でも感覚でしかその場所を見たことがないからね。行ってみたいの、が見ている世界を」


(感覚共有のスキルか? それともスライム特有の別のスキルかの? どちらにしろじゃ、この世界のことを教えてくれるのならこのスライムと旅をしても良さそうじゃな)


「分かった。おぬしと旅をすれば良いのじゃな」


 一匹は頷き、条件を了承した。

 スライムは一言「ふふ、ありがとう」と優しい声で言った。

 しばらくしてスライムは「着いてきて」と言いながら奥の部屋に入っていった。そこには、辺り一面輝くばかりの魔鉱石が埋め尽くされていた。


(す、すごい……この量、下手したら王宮の倉庫と同じくらいあるんじゃないかの……)


 一匹が魔鉱石の多さに驚いて目を丸くしていると、


「なんか、ね。毎日集めてたらいつの間にかこんなに増えちゃったの……それでね、どうしようか困ってて、欲しい?」


「?! く、くれるのかの?!!」


「いつか使えるときが来るんじゃないかな~って思って、貯めてたの。多分この時のためにね」


(……魔鉱石。魔道具や魔力を貯めたりするのに使われる希少な鉱石……人族の使い方だと確かそうじゃったな。わしら魔物にとっては貴重な魔力確保資源であり、ステータスアップのための食料。それがスライム風情……だと言葉があれじゃが、この量を集めるのにいったい何十年いや、スライムの大きさを考慮すれば何百年、かの……?)


「これだけあれば存外強く慣れると思うのじゃが……おぬしは、使わなくて良いのかえ?」


「んふ、これでも一日二つは使ってるんだよ?」


 スライムはかわいらしく、そして誇らしく言った。


(二つか……スライムにとっては妥当な量じゃな。スライムは魔物の中で最小かつ最弱とされておる。じゃから、一日に魔鉱石を食べ過ぎると死に至る可能性があるのじゃったな)

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