第十一話 過去の話 2
「……そんなもんねぇよ、そもそも俺に居場所なんてねぇからな」
そんな悲しいことを言うなよと条件反射で反論くらい出来そうなものだが、意外にも赤いスライムの言い分は合っている。
(奴隷落ちのレアスライム、奴隷商にでも見つかりようものなら捕まって売られるの。もしくは……実験動物にされたりもあるの)
ならばと、人に見つからないような誰にも目の止まらぬような場所で暮らすしかない。
スライムは長命だ。水がこの世に存在している限り、核が破壊されない限りほぼ永遠に生き続ける。それこそ百年でも経てば人族は代替わりするはず、印象や伝承、歴史、記憶も少しずつ変わりいずれは接し方が変わってくるだろう。
「……その目、呪われてるのよね?」
先程一匹が横入りしたせいで言えなかったことを少し間が空いてからスライムは言った。
スライムを見ると小川から出て小石の上に降り立っていた。ボディに掛かっていた雫が一滴残らず体内へ吸収される。まるで脂でも塗ったかのようにテカり具合が増し透明度が上がった。透明度が上がったとは言ってもスライムの弱点、核が見えることはなく精々後ろの石や小川が微かに分かる程度だ。
「?! ……よく分かったな。まあこんだけ燃えてたら分かるか」
「その呪いのせいで暴れちゃう……んだよね?」
「そうだ。原因は分かってるが自力で抑え込むことはできなかった」
(……やはり、なぜかはわからないんじゃが妙な親近感、いやこれは
「おぬしのその目はいつからそうなったのじゃ?」
赤いスライムは一瞬考える素振りを見せるが、全然覚えていなかったのか呆れたようにため息を漏らすとこう答えた。
「……皮肉なもんだな、あいつらにされた恨みは覚えてんのに何ヶ月前なのか、何年前なのかも思い出せねぇ……」
一匹は相づちを打とうとするもまだ話の続きがあったらしくあわよく変な声が出そうになった。
「だがな、少なくとも五十年以上は前だったはずだ。カルデノ山が噴火した年がそれぐらいだったはずだからな」
「カルデノ山?」
一匹には聞きなじみのない名称だったため思わず聞き返した。
「俺を実験してた奴らのあ~……めんどいから一から説明する」
そう言うと少し長くなりそうだからと、喉が渇いたのか小川まで近寄り浸かった。
浸かると同時、小川から湯気が上り始めた。一匹とスライムは驚き二匹揃って「えっ?」と声を上げた。二匹の反応を見て何を思ったのか赤いスライムはあっけらかんとこう言った。
「ん? 俺自身は炎無効あるし別に熱くともねぇぞ」
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