第十六話 精霊の住まう森
一匹達は精霊の森の里に来ていた。
ひとえに精霊と言っても種類がある。例えば下位の精霊は野良精霊と呼ばれ基本的に群れて行動することはなく、森の中を彷徨っていることが多い。霊感が強い人や、聖職者なんかはよく目にすることがあるらしい。上位の精霊はそれとは逆で、群れて行動し子孫を残すため住み家を作り縄張りを築いている。滅多に人前に出ることがないため人見知りが多いのだとか。
シルフィの案内で一番偉い上位精霊が居る場所にたどり着いた。
「あいさつはしとかないとね」
これから二日ほどお世話になるのだ。あいさつしておくのは普通だろう。シルフィに促され一匹達は部屋の中へ入る。
「良く来たな、旅の者よ。たいしたおもてなしはできないかも知れないがくつろいで行っておくれ」
「すまんの。わしらに気を遣わなくても良いぞ」
「そんな言い方だと勘違いするでしょ。これから少しお世話になります」
ぺこりとすると上位精霊は面食らったように目をぱちくりとさせた。
「……人みたいなことをするんだな。お前さんは」
「あっ、あの……」
「責めておるわけではないよ、ただ驚いただけのこと」
――話が終わり、家を出ると今夜泊まる家へシルフィが案内してくれた。
「なかなかに広いの」
三匹で泊まるにしてはかなり広い、とはいえドラゴン一匹入ることは不可能な大きさだが。それこそ人が三人泊まって充分なほどの広さだ。
一匹は長旅で疲れたのか部屋に入るなりその場で溶けたように寝転ぶ。
(ゆったりできるのはほんの三日とはの……)
まだやることがあるのだがらこんな所でゆっくりしている暇はないだけだが。とはいえ、スライムは長寿だ。狩られなければかなり長い年月を生きる魔物でもある。一匹の場合は元がドラゴンなのでそれほど時間に違いは無いが。
「暇じゃな~……」
思わずそう口にする一匹に、スライムが反応する。
「今までが忙しすぎただけだよ」
「それもそうじゃな」
一匹は寝返りを打つ。ぐでんとひっくり返ると赤いスライムを見た。
「魔導具も早く見つけに行かないとね」
「ん? ああ、そうだな……ヤバくなったら被害の少なそうなとこ行くから安心しろ」
振られると思っていなかったのか多少適当な相槌になりつつも、冗談を交えながらハンドサインで親指を立てた。
「……明日にでも上位精霊さんに村がある場所を訊かないとね」
「そうじゃな。それで、ここで何をするんじゃ?」
シルフィに言われるがまま精霊の里にやって来たとはいえ、ただダラダラ過ごしていても時間の無駄ではあるし、一匹としても街などの人が居る場所の方が気になる。
「ん~……」
スライムは考える素振りを見せながら目を瞑っていると、良い案でも思い浮かんだのか「そうだ!」と声を上げた。
最強(ドラゴン)の転生先は最弱(スライム)でした 転香 李夢琉 @eito0224
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