第六話 廃墟な街 4

 ――一匹はその時の記憶が一切なくなっていた。

 スライムは住み家に戻ってから一匹の看病(といってもただ見守っているだけだが)をしていた。一匹は完全に寝込んで(ただ液体状に広がって体力を消耗している)おり、なかなか目を覚ましそうにはなかった。スライムは何度か声をかけたり魔オール弾の内の一つ、回復弾を撃ってみたりしているのだが今のところなにも変化はなかった。


「私はこれからどうしたら…………」


 ――二日が経った。一匹は未だに目を覚まさない。だが確実に変化は起きていた。一匹の液状化が少しずつ和らいでいたのだ。二日前に比べ纏まりつつある。このままいけば二、三日後には元に戻るだろう――スライムはそう思っていた。

 日が暮れ朝が来た。スライムは一匹の容態を確認した。さすがに医者でもないので事細かくはわからないが昨日よりも楕円に近づいていたがスライムはなにかがおかしいと思った。


「? 身体は青いままだし、少し黄色っぽくなってるのは弱ってるからだし……なにか、どこかが……」


 スライムは頭を悩ませた。いろんな角度から一匹を見回したが結局何がおかしいのか分からず一日が終わってしまった。

 スライムはこのまま頭を悩ませていてもなにも分からないので魔鉱石を食べ寝ることにした。魔鉱石を二つ口の中へ放り込むと『捕食』しステータスアップを図った。いつも食べているはずだが今日は不思議ともう一つ食べられる気がした。スライムは念のため五センチほどの小さな魔鉱石を手に取り捕食した。

 ――スライムの身体が淡く光った。お腹の底、スライムの命とも言える核が微細な輝きを放ったのだ。


「これって……」


 スライムは核から漏れでる光に包まれ――意識を失った。


 ――翌日太陽が丁度真上に昇った頃スライムは目覚めた。

 身体はいつも通り緑色、瞳も変わらず黒色、だが身体に違和感が。

 スライムは水溜まりがある場所まで走った。恐る恐る覗き込んだ。


「……角? それとも触角?」


 スライムのおでこ辺りから小さな突起が生えていた。気になり触手を作って触れてみた。

 硬くはない。かといって柔らかすぎはせず、伸び縮みする。スライムは不思議に思いながら水溜まりに映る角を見つめた。

 ――家に戻ると一匹の姿が見当たらなかった。つい先程までここに寝そべって居たにも関わらずスライムが少し目を離した隙にいなくなってしまったのだ。

 スライムは各部屋を見回った。


「――君ー! どこにいるのー?」

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