最強(ドラゴン)の転生先は最弱(スライム)でした

転香 李夢琉

魔物の蔓延る森

第ー話 不幸と出会い


「なな、なんじゃこりゃーー!」


         ◆ ◆ ◆


 わしは最強の魔物モンスター、ディズメント・ドラゴン。


 一三九九年生きたネームド魔物モンスターじゃ。


 まさか、生涯名前など貰うことも無いと思っていたのじゃが……じゃがまあ、良い半年であった。せめてあと一年生きたかったの……どう考えてもきりが悪いではないか!


 それは置いといて、わしが今どこに居るかというと……対ドラゴン用結界。翼には穴が空き、至る所から血が流れ出ている。おまけに左腕は無くなっておるの。


 わしは長年生き、人族ヒューマンを見てきた。そして『ステータス表示』というスキルを、百年掛けて覚えたのじゃ。


 なんとも便利な物よのう。これでわしの今の HP ヒットポイントを見るに、3472/130562じゃな。もうボロボロじゃ、これではいつ殺されてもおかしくないの。


「Salva i miei compatrioti――」


 人族ヒューマンがドラゴンの周りを囲うようにして数十人並び、杖を構え大規模詠唱をし始めた。


 (これは……なんの魔法じゃ? わしに知らぬ魔法があるわけない!)


 そして……詠唱が整い、魔法が発動した。一面に輝くアオ白い光は、やがてその場に居る誰しもを喰らい尽くすかのような光だった。そして、目映い光と共にドラゴンを食らいつくし、対ドラゴン用結界だけを残して消えた。


「せ、成功だ!」


 一人の人族ヒューマンが声を上げた。その声は辺り一面に響き渡りやがて大歓声を招いた。


「我々の勝利だ! 我ら人族ヒューマンがこの大陸を統べる王となったのだ!!」


 その言葉と共に歓声の勢いは更に増していった。……――


         ◆ ◆ ◆


「こ、ここはどこじゃ?」


 まだ意識と視界が朦朧もうろうとしている中、一匹の眼の焦点が徐々に合ってきた。


「んん? 地面が……すぐそこにある……?」


 視界が良好となった。

 目の前に広がっていたのは地面だ。前に倒れればすぐ触れそうなぐらいの位置、目と鼻の先にあるのだ。見渡す限りの森、一匹が居る場所だけ不思議と木が生えていない。


「これは……いったい……ん?」


 左を向くと、スポンジを置けば吸い取れそうなくらいの小さな水溜まりがあった。一匹はその水溜まりを恐る恐る覗いてみた。水に反射し映った一匹の姿は、あの美しく凜々しい『ドラゴン』――ではなく、水々みずみずしく愛くるしい可愛い『スライム』だった。


「なな、なんじゃこりゃーー!」


(わ、わしの身体が……スライム、じゃと……)

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