♡第45話 嘘だ。嘘だ。嘘だ。
姫宮さんが真島さんの家族。訳が分からない。私は頭が混乱して、呼吸が浅くなった。
ねぇ、ほんとうに、訳が分からないよ。
「ごめんね、複雑なこと言って。さっきタツノオトシゴのコーナーで言ったように、俺片親なんだよ。で、うちの母さんと華乃の父さんが恋人になったから一緒に住んでるんだ。華乃とは……もう5年以上一緒に住んでる」
「そんな……」
「あ、でも安心してね。華乃とは何にもやましいことはないから。もちろん初めて住むときは美人過ぎて緊張したけど、今では妹としか思えないし」
嘘だ。嘘だ。嘘だ。
私は取り乱していた。理解が追い付かない。
だって……。
「……だって、じゃあホテルは⁉」
「千歌ちゃん、落ち着いて。ホテルに行ったのにも、ちゃんと理由があるんだよ」
「嘘……だって、言い訳なんかできないでしょ」
「ちゃ、ちゃんと説明するから」
私はすとん、と腰が抜けたように座った。
「華乃、半年前くらいからストーカー被害に遭ってたんだ」
「半年前……」
ゾッとした。正樹の『ヒーローSAVE姫宮LOVE作戦』は、姫宮さんにストーカーがついてると嘘をついたけど、まさか本当にストーカー被害に遭ってたなんて……。
だから正樹の申し出をすんなり受け入れたのかな?
「それで塾の送り迎えとかはしてたんだけど、なんかその気配が強くなったんだって。それで、ある出来事があってから華乃が悄然としちゃって……。だから犯人を撒くために思い切ってホテルに入ったんだ。苦肉の策の、恋人アピールだよ」
そんなことって……。じゃああれは、浮気じゃなくて姫宮さんを助ける行動だったってこと?
でも……。
「な、なんですぐに警察に相談しなかったの?」
「うん、もちろんそれも考えた。だけど華乃は以前も別のストーカーに遭っていて、その時警察に相談したんだけど全然対処してくれなかったんだって。警察は事件が起きてからじゃないと中々動いてくれないからね……。それに、華乃は芸能活動をしているから、変な噂が立つことを嫌がってたんだ」
もう、頭が真っ白だ。私が思い込んでいた事実と、全然違うよ。
「でも結局俺、あんまり役に立てなかったんだよね。それを皆川に何故か知られちゃって、ヒステリーを起こさせちゃってね……。だからそれから華乃の送迎とかは皆川から強制的に禁止されちゃったんだけど、運よく心優しい人が塾から送り届けてくれるって華乃が言ってたからホッとして。最近はストーカーもなくなったみたいだし」
真島さんと姫宮さんの件、伝えたのは正樹だ。
送迎も、正樹だ。
ああ、もう、信じられない。
事実って、こんなに違うものなの?
じゃあ、私たちが今までやっていた復讐ってなんなの?
疑似浮気ですら、なかった?
……誰も浮気してないじゃん。
「それから、うん、皆川のことだよね――」
私は、何も見えなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます