♡エピローグ また正樹に出会うために 1/3

 ロケットの打ち上げをみた。

 この世界は、私が思ってるよりも果てしなく広い。


 正樹と見た河口湖はちっぽけだったけど、それだけが世界じゃない。

 宇宙は無限に広がっていて、私の知らないことがまだまだたくさんある。

 

 そこに私も飛んでゆけばいいのだと、自分に言い聞かせた。


 でも、それは無理だった。


 皆川さんと私は、残念ながら似ている。

 お互いに心が空虚で、闇を抱えていて、桁はずれの依存心を持っている。


 私は最初、その依存心をユーちゃん先生へ向けたけど、それが恋愛として正樹に向けられたら?


 ……いや、さすがに皆川さんのように犯罪を犯すことはない。でも、人はそんなすぐには変われない。いくら変わろうと思っても、変われない。お母さんに邪魔されたら、余計に。



 私は、おかしくなった。



 鹿児島に来てまず、私は空港で暴れた。

 機内で見た映画は、母親に恋路を引き裂かれるという内容だった。それを観てしまったせいで、今までの出来事が走馬灯のようにフラッシュバックした。だから、私と正樹を無理やり引き離したお母さんがどうしても許せなくて、口論になって、持ってきたものを全部壊した。慟哭した。

 そしたらお母さんも、暴れた。私たちは親子だから、似ているんだね。ユーちゃん先生が消えたお母さんと、正樹が消えた私じゃ、ダメだったんだよ。


 結局、私は正樹に助けを求めるために電話をかけようとしたけど、お母さんに連絡先を全部消されてしまった。


 今の時代、チャットアプリしか入れないのが当たり前だけど、せめて電話番号は聞いておくべきだった。住所を知っておくべきだった。でも、後悔しても無駄だった。何もかも遅かった。


 それからの私は、抜け殻と化した。

 毎日毎日、ただ空をぼーっと眺めるだけ。


 そうして数か月が過ぎたけど、浮大は受けなかった。


 受けさせてもらえなかった、が正解かもしれないけど、そもそも高校からのエスカレーターじゃないと私の頭じゃ入れない。

 だから九州内の冴えない大学に進学した。


 ここでも空をただ、ぼーっと眺めるだけ。


 私の唯一の心の支えと言ったら、首元のエメラルドだけだった。


 

 人間ってなんでこんなに恋愛に傾倒するんだろう? 

 なんでそういう仕組みになっちゃったんだろう?


 子孫繁栄できるなら、自分の遺伝子に合った異性を見つける嗅覚を持ってセックスして終わりでいいじゃん。


 でも、人間はそういう風にはできていない。


 もちろん恋愛に淡白な人も、多数の人と恋愛する人もいる。


 でも私や皆川さんやお母さんは少なくともそうじゃない。



 その人じゃないと、ダメ。



 その人が消えたら、人生が終わるの。



 未熟だし、惨めだし、馬鹿だし、情けないし、稚拙だし、無様だよ。

 


 でも、その人が消えたら、人生が終わるの。




 疑似恋愛とか、疑似浮気とか、そんなことしないで、最初から正樹と向き合っていればこんなことにはならなかったよね。


 でも、そんな後悔は無価値だ。


 だってもう、私の隣に正樹はいないという現実はどうあがいても変わらないから。



 いっそ適当な男とセックスしてみようかと思った。死んでみようかとも思った。


 でも、そんなの根本的な解決にはならない。それくらいわかる思慮分別はある。


 だから私は4年かけて、ようやく答えを見つけた。



 お母さんの呪縛を逃れて、東京に上京する。




 また正樹に出会うために。





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