♡第34話 あなたの心の中にいるのは誰ですか
ユーちゃん先生との出会いは4歳の時。
お母さんが28歳の時に離婚して、今のアパートに引っ越した。その隣に住んでいたのがユーちゃん先生。当時中学2年生。
ユーちゃん先生も両親が離婚していてお母さんと2人暮らしだったから、境遇が全く一緒だった。そんな共通点もあって、私たちは年の差をもろともせず、すぐに打ち解けた。
4歳の頃の出来事はほとんど覚えてないけど、ユーちゃん先生が遊んでくれたことだけは鮮明に覚えている。
遊ぶ内容は色々。特に好きだったのは、『あんたがたどこさ』と、2人だけでの『ハンカチ落とし』。
『あんたがたどこさ』をやる時は、よく足がもつれて転んで泣いてた。でもそのたびにユーちゃん先生が助けてくれるから、それが嬉しかった。
『ハンカチ落とし』では、片方が座ってもう片方の周りをひたすらぐるぐる回り、いつ後ろにハンカチを落としたかを当てた。何故か『どんぐりころころ』を歌いながらやっていたのが懐かしい。
普通の中2男子はゲームや部活やえっちな妄想で頭がいっぱいだと思うし、そもそも反抗期だから、幼児と頻繁に遊んでくれること自体が稀有だと思う。
だからそんな優しいユーちゃん先生がその頃から大好きだった。
でも、ユーちゃん先生が私と同じ高校3年生の時、転機が訪れた。
ユーちゃん先生のお母さんが彼氏の家に入り浸るようになって、あまりアパートに帰ってこなくなったのだ。
ただでさえナイーブな受験の時にそういうことがあって、ユーちゃん先生は悄然としてしまった。
当時小学3年生の私は、かわいくデコった手紙や図工で作った作品をあげたりして何とか励まそうとした。でも、駄目だった。
それからユーちゃん先生は、不登校になった。
私はたくさん泣いた。私にいつもやさしい笑顔をくれたユーちゃん先生が家に引きこもって全然会えなくなったから。
多分この時の寂寥感がトラウマになってたから、ユーちゃん先生が休職した時は余計に辛かったんだと思う。
でもユーちゃん先生はなんとか受験をして、教育系の大学に通った。それからはまた普通に話せるようになったけど、どこかで心の距離を感じていた。
心の距離を感じれば感じるほど、もっと私の方を向いて欲しいという気持ちが強くなった。
社会人になって会えなくなってからも、ずっとずっと想っていた。
同じ高校の教師と生徒になっても、昔みたいに心から笑える関係に戻りたかった。
ねぇ、ユーちゃん先生。
あなたの心の中にいるのは誰ですか。
姫宮さんですか。
私じゃだめですか。
今、正樹がいなくなった心の穴に、ユーちゃん先生がすっと入ってきた。
そして一瞬で、私の心に棲みついた。
ユーちゃん先生、今度こそ私の傍にいて。
4歳と14歳だった、あの頃のように。
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