疑似浮気~浮気による復讐をするために偽カップルになった大学生とJKが、いつの間にか本気の恋に落ちる話~
花氷
★プロローグ 俺、浮気してぇ!
世の中には、恋愛強者と恋愛弱者がいる。
前者は何故か恋人やセフレが途切れない。常に好きな人と、あるいは身体関係の利害が一致している人と結ばれている。
一方、後者は何故か恋人やセフレができない。恋愛感情とかも本質的にはよく分からないし、仮に好きな人ができても実ることはそうそうない。
セフレとか浮気とか不倫とか、そういう言葉なんておとぎの国のお話だよね?という感じ。
まあその主な原因は、恋愛強者が恋愛の旨味を搾取していることじゃないだろうか。そのせいで、恋愛弱者にはそういう機会が回ってこない。
何事も弱肉強食なんだよな。
それでもって俺はというと……まあ、察して欲しい。
スペックはいたって普通だと思うんだけど、何故だ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名前:
年齢:19歳
学校:
顔面偏差値:55
体型:171cm、細身で若干筋肉あり
性格:ごく普通、多少口下手
趣味:ギャルゲー、人間観察、読書(ラノベ)、ギター(かじる程度)
サークル:バドミントン同好会
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ファーストフード店でポテトをかじりながら、俺は思う。
何で彼女できないの?って。
確かに俺は典型的なフツメンだけど、ごくたまに「イケメン」と言われることもあるんだ。
男友達もそれなりにいるし、サークルも半陽半陰なちょうどいい運動系に入ってるから、周りに女子もいて問題なく喋れている。
服装も無難にそろえてるし、清潔感もあるはずだ。
秀でているところはないけど、欠点もない。
でも……何故かモテない‼
告白も1回しかされたことがないし(諸事情で振ってしまった)、自分から好きになるともれなく玉砕。
恋愛のいろはを学びたくてラブコメを読んでも、そもそもえっちでかわいくて自分のこと好きな女子が迫ってくるなんて現実ではありえないから、あまり参考にならない。
だから俺はもっぱらギャルゲーを嗜んでいる。
かわいい女の子をたくさんたぶらかして、恋愛強者のステータスである浮気をしまくるのがたまらなく楽しい。
でも、それはあくまで疑似体験。
俺って彼女ができないまま一生を終えるのだろうか。
今年20歳になるからこそ焦りが生まれ、不安に苛まれてしまう。
肺の底からため息が溢れ、偶然左隣に座っている人のため息と重なる。
その時だった。
ファーストフード店の窓際カウンター席にいた俺は、窓の向こうで歩いている1組のカップルを目撃した。
バドサーの1コ上の
身長181cmの細マッチョ。若手NO.1俳優の菅野将太に似ている。
性格は……悔しいが完璧だと思う。サークル幹事長で誰とでも分け隔てなく喋る好青年だけど、ちょい悪いことにも足を突っ込める柔軟性の持ち主。
おまけに、彼女と別れても悪い噂が一切出回らない。
サークル内での恋愛沙汰は全て筒抜けだから、悪い噂は光回線かってくらい秒で広まるけど、不思議なくらいに悪評がない。
つまり真島先輩は、俺が知る恋愛強者の中でも頂点に君臨する存在。恋愛神。
そんな真島先輩の今の彼女は、俺の同期の
2人は誰もが羨む美男美女カップルで……俺が1番嫌いなカップル。
だって俺、皆川のことがサークルに入った時から好きだったから。
早く別れろと念じてるけど、かれこれ5か月続いていていまだに仲睦まじい。
そのデート現場を目撃するなんて、不運すぎる。
そう思ってたのに――
今真島先輩と手をつないで歩いているのは、あろうことか別の女性。
大袈裟に瞬きをしてみても、両手で目をこすってみても、隣にいるのは皆川じゃない。
――女子高生だ。
俺の中の黒い感情が心をに充満し、煮えたぎり、
――写真を撮って、サークルにばらまいちゃえよ。
そんな悪魔のささやきが耳の奥でこだまする。
気づいたら俺の手元から、カメラのシャッター音が響いていた。
そんな俺に気づかず楽しそうに談笑する真島先輩が視界からフェードアウトした瞬間、俺は全身の力が抜けた。
目の前にある、冷めてしなしなになったポテトみたいに。
小さなスマホに、大きな悪意。
俺の意思ひとつで、真島先輩の評判はズタボロになる。
そしたら皆川は――
あれ。皆川は、悲しむよな。
ばらまいたのが俺だって知ったら、振り向いてもらうどころか恨まれかねない。
結局……恋愛強者だけが甘い蜜を吸う世界なんだ。
恋愛弱者はそいつらの無言のマウントに打ちのめされて、枯れてゆく。
あーあ。俺もいっそ真島先輩になりてぇよ。甘い蜜を吸ってみたい。
あんなハイスペックに生まれて、皆川みたいなかわいい女の子と付き合って、ギャルゲーみたいに別の女の子と浮気したい。
浮気は良くないことだと頭では分かっているけど、浮気こそ恋愛強者のステータスだという考えは変わらない。
ああ、俺クズだわ。でもこれが男子大学生だよ。男子大学生は大概クズだ。
なら開き直って、心の中で叫んでやる。
「俺、浮気してぇ!」
真島先輩のJK彼女の浮気相手になって、真島先輩に一泡吹かせたい。
その思いが強すぎたのか、心の叫びは意図せず口をついて出ていた。
そして、左隣の人の言葉と綺麗にㇵモった。
あれ、今この人も俺と同じことを言ってなかった?
驚いて、思わず左を振り向く。
そこにいたのは――小動物みたいにかわいい女子高生だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます