第66話


 マーダードールズの話によると、アラダインは生きているとのことだった。

 そもそも、彼女らマーダードールズはマスターである勇者から一定以上離れると消滅してしまうと言う話であった。


「まぁサトルのスキルに関しては、メロベキア国王にも伝わると考えて間違いないわね。警戒は怠らない様にしないと」


 どうしようもなく使えないと思っていた勇者サトルに関して、メロベキアがどのように動いてくるかがわからない。

 次の勇者召喚のためにも、国に害をなすならと殺す可能性があるし、生け捕りにして再度洗脳を試みる可能性も十分にある。


「さて、ここからが本題、正直私も信じたくは無かったけど……イントルーダー内に裏切り者がいるわ。少なくても貴方達じゃないことは間違いないでしょうからいっちゃうけどね」


 ニーアはあそこに騎士団長であるアラダインが控えていたのはただの偶然ではないと考えているようだ。その意見に関してはサトルも賛同するところである。


「しかも昨日の夜、突然決まった作戦に合わせられちゃね。単独犯と言うわけじゃないでしょうし。それに、牢屋からサトルを救い出した日、あの時も完全に待ち伏せされていたわ」


 サトルに役立たずの烙印を押され、牢へ幽閉されたとき、ニーアは秘密の通路を使って助けた。だが橋の上待ち伏せされ、大砲の一撃により完全なる脱出は失敗したのだった。


「本当は帰らずの森のアジトで色々整えたかったのだけど、裏切り者がいるのをわかっていてそのアジトに戻るのも危険よね。まぁ貴方達はこの事については何も話さないで頂戴」

「わかった」


 メロベキア王国打倒を目指すための組織イントルーダー。だが、その中にメロベキアへ与する裏切り者がいる。


 だが、サトルがそんなことに気をまわしてもどうすることもできない。


 自分ができることはいざとなったとき、迷わない覚悟と、聖剣エクスカリバーについてもっとよく知ることだ。

 もちろん、サトル自身もメロベキアには酷い目に遭わさ、生存している限り奴らの影に脅かされることになる。

 それ以上に、マリーがメロベキアへ反抗の意志を持っているならそれを手伝いたいと思っている。


「ニーア、知っていることだけでいい、聖剣を使った勇者の話をもっと聞かせてくれないか? 今はどんなスキルを使えるか全くわからない。だが、きっかけさえあればもっと強力なスキルを使うことができるかもしれない」

「それは戦う覚悟があるってことでいいのね?」

「ああ、もちろんだ」


 おそらく、この時の返事は異世界に来てから、いや今まで生きてきた中で、一番強い返事だったとサトルは思った。

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