第14話
扉を開けると、そこにはプレートアーマーに槍を携えた完全武装の兵士が立っていた。あまつさえ、槍の鋭い切っ先はサトルへと向けられている。
「ナカジョウサトル本人で間違いないな?」
「え、あ……」
その異様な光景にまともな返事も出来ないサトル。つい数時間前までは歓迎ムードが漂っていたのに、まるで目の前にいる兵士は……
「貴様を拘束する!」
敵意むき出しではないか……
先程まで
「わけがわからない」
自分が置かれている状況に困惑し、頭も回らない。そんな今を整理するために独り言を零してみたが特に効果はない。
ただはっきりと肌で感じたことは、兵士が訪れたあの場で抵抗でもしていれば間違いなく殺されていたことだけだ。
だから、混乱する頭を置き去りにして、身体は大人しく言う事を聞いたのだろう。ここに連れてこられ、どれ程の時間が過ぎたのかもわからない。
どこからか吹き込む冷たい風が、今だ答えへと歩み出しもしない頭を冷やす。
――グゥゥゥ。
「ははは……どんな時でも腹は減るもんなんだな」
自分の置かれた状況も鑑みず、ただ意志とは別に動く腹の虫が鳴いた。だが、訳の分からないこの状況下で、そんな日常の片鱗はサトルを少しだけ冷静にさせてくれた。
「腹の具合からもう半日は立っているな……」
朝食のちに模擬戦、そこからどれだけ呆けていたかは定かではないが、少なくとも日付は変わっている時間だろう。
「どうしてこんな状況なのか」
やっぱりアレであろうか。そもそも異世界に無理矢理連れてこられたサトルにとって身に覚えがあるようなことはたった一つしかない。
「あの模擬戦だろうな」
一方的な試合だった。騎士団長と平和しかしらない国出身のド素人。天地がひっくり返っても番狂わせなど起ころうはずもないカードだ。
そんなカードを誰もが期待して見ていた。
何故か……それはサトルが召喚された勇者だからである。
サトル自身も自分には強力なスキルがあると太鼓判を押されていたし、もしかしてが起きうるのではないかと心のどこかでは思っていた。
しかし結果はあの通り。相手は騎士の長であり、サトルは変わらずただの高校生であった。
わざわざ異世界から召喚した勇者候補がこのような体たらくではメロベキア王達も随分と落胆したことだろう。
「だからと言ってこの仕打ちはなんなんだよ……」
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