第102話


「無駄だやめろ。ただ死ぬだけだぞ。さっきも見ただろう⁉ 家からでるな!」


 サトルは建物からゾロゾロと出てくる国民達に叫んだ。彼らは外に出たものの、先程の光景を見て二の足を踏んでいる。


「何を迷っている⁉ さぁメロベキア王国のために逆賊を討て! 成功した者には地位と名誉! 臆した者には死と一族の悲惨な末路を!」


 彼らは決して国王への忠誠などでは動いていない。


 ただ脅されているだけだ。そして立たされている。進んでも退いても死しか待っていない未来に……


 たった数日ではあったが共に死地を旅し、サロメを仲間だと思っていた。イントルーダーの仲間として彼に信用を置いていたニーアはどんな心境にあるかはわからない。


 彼らは動かない。彼方から手を出そうとしない。第一目標はおそらく時間稼ぎ。王達が逃げ延びるまでの時間を稼ぐことがサロメ達の主目標なのだろう。


 だからこそ国民達を脅して時間稼ぎの手に使っている。


 サトルは意を決してアラダインから拝借した勇者殺しを引き抜いた。エクスカリバーとヒロイックスレイヤーを構えて城門に仁王立ちしているサロメを睨みつける。


「マリー、ニーア。俺が切り開く!」


 サトルは彼女達の返事を待つことなく、屋根の下から飛び出した。サロメの後ろに控えている弓兵達は一斉に弓を引き絞り、放つ。


「グングニール!」


 サトルは数本のグングニールを生成し、弧を描き降り注ごうとしている矢に向かって放った。殲滅の一閃は矢の雨に埋もれたと同時に爆発。同時に放っていたグングニールは連鎖爆発を起こし、弓矢による面の攻撃を無効化した。


「なにをしている! 逆賊を討て!」


 家々から飛び出し襲い来る国民達。それぞれに武器とも言えない心許ない武装をしてサトルに襲いかかる。サトルはそんな彼らをヒロイックスレイヤーを持って容赦無く斬り捨てる。


 アラダインの剣技が宿った勇者殺しの剣で駆逐して行く。


「うわぁぁぁ!」

「イタイイタイ!」


 サロメに至る道にサトルが斬り裂かれた国民達が転がる。街中に血の臭いと、苦しむ人々の声が木霊する地獄絵図。


「貴様それでも人の子か!?」


 城門でサトルの行動に狼狽えるサロメ。


 サトルはそれをお前にだけは言われたくない。と強く思う。


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