第86話
第86話
サラニア兵の半数以上はメロベキアに住む国を奪われた難民達で構成されている。なんの訓練もしていない。戦争の前は商人だったり、農民だったり……精々戦いと言っても自警団程度の力量しかない。
故に、作戦はシンプル。
「勇者の攻撃は強力無比ではある。けど十万にものぼる兵の数を捌くのはさすがに難しい……だから抜けてきた兵は複数人で囲んで数の暴力で撃破していく」
これがニーア発案の単純な作戦。殆どを勇者に寄るしかない作戦ではあるが、こちら側の被害を最小限に抑え、勇者の欠点を補うならこの作戦が一番である。
「ニーア! グングニールに切り替える!」
神の杖の最大使用回数の六発に達し、打ち止めとなったサトルはエクスカリバーを前方に構え直す。
「殲滅の一閃、グングニール!」
サトルの背面の空が眩い光を放ち、数十本にも及ぶ殲滅の光槍が出現する。
「いい? 十分引きつけるからね!」
作戦の総指揮はニーア。マリーはサトルの護衛。
「弓兵用意!」
各種主要となる部隊の指揮はイントルーダーのメンバーが担う。
グングニールの使用制限は約五百発。強力なスキルであることは間違いないが十万もの兵を駆逐する事を考えれば心許ない。
スキルにはそれぞれ一日の中で使用制限があることは二ヶ月の訓練の際に発覚したことではあった。もしもそんな制限さえ無ければ勇者単騎でも十分にメロべキアを討てたはずだが……
元々スキルに使用制限があったのか、それともウェポンマスターのデメリットなのかは判然としない。それでも歴戦の勇者達のスキルはどれも切り札となる程に強力であることは変わらない。
正しい運用さえすれば負けるはずもない。
イレギュラーが無ければだが……
「放て!」
ニーアの号令で一斉に放たれる矢は、サトルの遥か頭上を通り過ぎ、進軍してくるメロべキア兵に降り注いだ。
それに対して訓練通りだと言わんばかりの洗練された動きでフルプレートを着た騎士が前に出て巨大な盾を構える。身軽で軽装の兵達はそんな騎士の後方に隠れて、真上に盾を展開。降り注ぐ矢への防御姿勢を取った。
だが、当然そんなことは織り込み済みだ。
この防御姿勢をとらせ、動きを止めるのが目的だ。
「サトル!」
「あぁ!」
サトルは空中に停滞させていたグングニールを放つ。
グングニールは矢をもろともしない巨大な盾に着弾し、即爆発。メロべキア兵達を吹き飛ばした。
グングニールが放たれる瞬間に動いたとしても鈍重なフルプレートを着込んだ騎士に回避は不可能。
軽装な兵は爆発を凌いでも矢の雨からは逃れられない。
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