第60話
受け止めたアラダインの剣は、彼の膂力と斬れぬものなしと謳われた聖剣の刃で真っ二つに切断される。
すぐそこに迫った彼の目が大きく見開かれたが、すぐさま闘争へ向かう獣のような表情へと変化する。
アラダインは使いものにならなくなった剣を投擲し、サトルは難なくそれを切り落とす。その間に彼はニーアによって殺害された兵士の持っていた槍を手に取っていた。
さすがの騎士団長。
彼以上にサトルが如何に弱いかを理解している者はいない。だが、サトルの一連の動きに驚きはしろ、明確な隙としてそれを押さえこみ、切り替えて見せた。
サトルは今対峙している化物に身震いした。
エクスカリバーの斬れぬものなしという特性のおかげで、刃に触れさえすればそれがそのまま武器破壊になる。だが次に来る攻撃は槍、アラダインは先程の攻防を踏まえて点の攻撃のみに絞って来るだろう。
そこまで考えうるほどに、聖剣を手にしたサトルの判断能力が上昇していた。これもスキル「ウェポンマスター」の能力の一つなのだろう。
いや、これこそがこのスキルの真骨頂であるとサトルは確信しつつあった。
不意にサトルの眼の前に何かが迫る。反射的にそれを切り落とすと、それはアラダインが胸にしていた金属製のプレートであった。
エクスカリバーを前に防具などなんの役にも立たないとの判断だろう。
次の瞬間、体が引っ張られるような感覚につられて跳躍。風を切り裂くような音と共に槍の切っ先が通過する。
注意を逸らしてからの薙ぎ払い。まさしく、足元をすくわれるところだった。
どうやらまだ聖剣とは経験の乖離があるらしい。
サトルは後退し、アラダインとの距離を取る。彼はそんなサトルに追撃はしてこなかった。
「見違えましたな勇者殿。男子三日会わねばなんていいますが、貴方の成長はそんなレベルの話ではない。上手くスキルを使いこなしているのですね」
彼がなぜここにいるかなど、今は問題ではない。アラダインの様子からは決して目の前の勇者を逃さないと言うような意志を感じとるサトル。
「なぜここにいる?」
後方にいるニーナとマリーの様子を盗み見ながらアラダインへと問いかける。少しでも時間を稼いで、目の前の強敵から逃げる算段をつけて貰わないといけない。
「時間稼ぎですか? ですが、時間が経てば経つほど不利になるのはそちらですよ。それよりも……共にメロベキアへと戻りませんか? 貴方の命だけは私が保障いたしましょう」
「それは断る。どうせ俺を洗脳して他国と争わせるつもりなんだろう?」
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