第61話
「おやおや、下賎な者に何を吹き込まれたかわかりませんが……その者達の言っていることは真実だと誰が断じてくれるのでしょうか」
今更そんな戯言に誰が付き合うものかとサトルは思う。アラダインも時間稼ぎならばどれだけでも付き合ってやると言わんばかりの姿勢なのであろう。
その間にも、聖剣との共鳴は続いている。感覚は研ぎ澄まされ、戦いの経験がスキルによってサトルへと流れ込んで来ている。
だが、それでも槍を構えながら全くスキを見せないアラダイン。彼がどれだけの強者であるかが浮き彫りになるだけだ。
そして、研ぎ澄まされる感覚が何かを感じ取った。複数の足音。
「これは――」
馬の足音だ。それも数十の。
「援軍か!」
今回の任務は簡単だと思っていた。いや、途中まではうまく行っていた。大した見張りも立てず、観光客として怪しまれずに聖剣へと接近し奪取できた。ここまでは計画通りに順調だったはずだ。
目の前にアラダインが現れるまでは――
「さぁどういたしますか?」
挑発的な彼の言葉を無視してサトルは考える。
一番の解決策は援軍が到着する前にアラダインを倒し、後の援軍も片付けることだ。だがそれができれば苦労しない。聖剣をもってしても、奴を倒せるビジョンが見えない。
下手にニーア達と共闘しても奴は倒せないだろう。それをわかってニーア達はこちらに手出しをしない。かと言ってこちらに出向いた荷馬車では後に来る援軍の馬を振り切ることは不可能。
サトルがアラダインを足止めできればニーア達を逃がすことができるだろうが、それは本末転倒。勝利条件の難しさによりほぼ詰み状態。
「もう少し戦力があれば……」
『マーダードールズを召喚いたします』
サトルの中でそんな言葉が響いた。
次の瞬間、サトルとアラダインの前へ突然として三つの人影が現れる。
燃えるような紅髪を左側頭部に結んで垂らしたサイドテール、蒼海のごとき長髪を後ろで束ねたポニーテール、日の光を吸い込み艶やかな黒髪を左右の側頭部で結んだツインテール。
そして髪色とそれに合わせ、特別に作られたような独特な意匠の衣装。
どれも白のフリルが特徴的で優美なように見えて、大胆に見せている腕や脚はなんとも扇情的で露出過多。
唐突に現れた存在へのサトルの第一印象は――魔法少女? であった。
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