第62話
巨大な鎌を携えた紅、自分の身長と違わぬ大剣を背負う蒼、左右の腰に一本づつ刀を携えた黒。
「「「お任せください、マイマスター!」」」
息ぴったりに調和した声はとても美しい音色を思わせた。
何が起きたのかも把握しきれないサトル。それは相対するアラダインも同様であった。
そんな彼らを知ってか知らずか、彼女らは武器を構えてアラダインへと駆けだす。
「サトル! なんだかわからないけど今のうちよ!」
混乱するサトルを呼び戻したのはニーアの声だった。気が付くとアラダインは三人の魔法少女に攻撃を受けている。少なくとも敵ではないようだ。
「今の内にお逃げください。マイマスター!」
黒髪のツインテ―ルがサトルに向けて言い放つ。
「あ、ああ!」
頼んだぞアインス、ツヴァイ、ドライ。まるで記憶を上書きされるように彼女らの名前が頭に浮かぶ。彼女らはスキル「マーダードールズ」が生み出した存在。
聖剣に刻まれた勇者の断片。
聖剣に宿る勇者の残滓。
さすがのメロベキア王国騎士の団長アラダインをもってしても、三人の猛攻には防戦一方のようだ。サトルはニーア、マリーと共に林道へと走る。
「サロメ! 馬車を出せ!」
サロメはニーアの言葉に応え、馬に鞭を入れて荷馬車を引き始めた。
三人は後方から荷馬車に飛び乗った。
「はぁ、はぁ」
息を切らして倒れ込むサトル。
乗り込んだニーアはすぐさま、後方を確認していた。
「追いつかれるのは時間の問題ね」
息を整えたサトルはニーアと共に後方の確認をする。十数騎の追っ手によって巻き上がる土煙が見える。
今はまだ遥か遠くに見えるが、スピードはあちらの方が上だ。つまり、追いつかれる前にあちらを巻いて逃げることを考えないといけない。
「何か手はないのか?」
ニーアにそう問うサトル。
「サトルこそ、何かないの? さっきのどうやったかわからないけど、女の子達を召喚したみたいな」
「それは俺も知りたいところだ。何がどうやってできたのか俺にもよくわかっていない。ただ、聖剣を所有してきた勇者のスキルを使えるなるみたいなんだが……」
「それが本当なら凄まじい切り札になるわね」
しかし、サトルの中でも無我夢中になっている最中に、何かの呼び声によって彼女達を召喚したくらいの感覚しかなかった。
自在にとは程遠いが、聖剣との同調が進めば何かこの場を逃げ切るものが見つかるかもしれない。
「少し時間をくれ」
サトルは聖剣を握り締め、目を閉じる。
後方から迫る追っ手を振り切る手立てを聖剣へ呼びかけるように……
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