第42話
誰かの助けをあてにするだけ無駄。逆に協力者を募る事によって裏切り者を引き入れてしまうリスクの方が大きい。
この村にやって来て間もないサトルには信頼できるような人物もいない……いや
「クレールさんは……どうだ?」
数時間の畑仕事を共にしただけだが、彼は信用できる人物だと思う。恐らくマリーもある程度の信頼をしているからこそ、サトルを任せたのかもしれない。
「そうね。クレールさんはきっと私達の力になってくれるかもしれない。だからこそ、巻き込みたくないわ」
「そうか……そうだな」
それに彼は高齢だ。こんな村でも慎ましく生きようとしているクレールを巻き込むのは気が引ける。
「見てサトル」
マリーが指さす方向をゆっくりと見ると、王国騎士と貴族いや、村の住人が話をしていた。サトルを探すために聞き込みをしているのだろう。
そこへ別の王国騎士が駆けてきた。遠くから見てもその様子は尋常ならざる慌てように見える。
聞き込みをしていた騎士は、後から駆けてきた騎士に連れられて村の奥へと消えて行った。
「おかしいわね」
「あぁ、何を慌てているんだ」
目的であるサトルはまだ見つかっていない。走り去った騎士たちの方向はマリーの家の逆側だ。死体が見つかって騒いでいるわけでもないだろう。
では、この瞬間に騎士たちが慌てふためくアクシデントが発生したことになる。
「……まずいわね」
「どうしてだ?」
何があったかわからないが、村の警備が手薄になるならそれでいいように思う……
「私達の最終目標はこの村の脱出よ。だから、サトルを探しに来た騎士と常駐で警備している騎士が単独でいる今がチャンスだったのに……」
集まってしまうとこちらに勝ち目はなくなる。それにいつまでも隠れているわけにもいかない。
つまり、最大のチャンスを今失いつつあるという事だ。
「そうか……でも今からでも遅くないんじゃないか? 慌てているならその後ろから襲えば……あるいは」
手に持った剣を強く握る。この先を生き残るためには決心しなくてはならない。自分の命だけではない、マリーを死なさないためにもその決心をしなくてはならない。
「いいわ。それに今何が起きているのか把握しないと始まらないしね。行きましょう」
大通りになっている道を迂回しつつ、慎重に騎士達が向かった方向へ移動する。
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