第43話
慌てて騎士達が向かった先には戦闘が行われていた。敵対しているのは黒いローブに身を包んだ謎の集団だ。
数は五人、対して騎士達は十四人。
だが、人数差もあるメロベキアの王国騎士達は黒ローブの連中に圧倒されている。こうやって見ている間にも一人、また一人と騎士が倒れていく。
それを目撃した没落村の住人は悲鳴をあげて村の中心部に逃げ出している。軽く錯乱状態だ。
だが、それを追うような仕草はなく、騎士達の死体の中に住人らしきものは混ざっていない。
黒ローブ達の得物は刃渡り三十センチ程度のナイフ二本。それを二刀流で扱い、騎士達の剣や槍を華麗に捌き、懐に入ったところでピンポイントに首を狙っての一撃必殺。
そんな光景を見ていたサトルはある言葉を思い出していた。
「アサシンみたいだな……」
それに彼らが使うナイフには見覚えがある。少し見かけたことがあるとか、そんな簡単な印象ではない。もっと生々しく死を連想させた場面。
それは……
そうやって考えを巡らせている間に彼らはその場にいる騎士達全てを打ち倒した。辺り一帯を血の臭気が酷い、サトルやマリー達が様子を伺っているところまで漂ってくる。
「そこにいるのは誰だ!」
黒ローブの一人がこちらに向かって声を上げた。若い男の声だ。
「サトル……どうする?」
黒ローブ達の目的は分からないが、メロベキア王国とは敵対関係であることは間違いないだろう。それに住人たちには危害を加えていない。
こちらを警戒しているのは、まともな村人ならその光景を見た瞬間に逃亡をしているからだ。
「敵の敵は味方かもしれない……それに恐らく、いや俺が個人的に信じたいだけだが、奴らは村の人には危害を加えていないようだし、交戦の意思を見せなければ問答無用で殺されることは無いと思う」
「わかったわ」
サトルとマリーは武器は携えたままではあるが、手を上げ、精一杯交戦の意思がないことを示しながら彼らの前に出た。
「ワケあって武器を手放すことはできない。だがこの通り交戦の意思はない。むしろ王国騎士達を倒してくれて感謝しているくらいだ」
そう簡単に警戒はとってくれないが、いきなり襲いかかって来るようなことはないようだ。
黒ローブ達は誰かの指示を待っているように見える。そいつが「殺せ」と命令すればサトルもマリーも逃げる間もなく死ぬだろう。
少しして黒ローブ達の中で一番背の低い者が前に出た。手を伸ばし、後ろに控えている奴らを制止しているように見える。
一連の動きの後、先頭に立った奴は言った。
「久しぶりね。サトル」
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