第10話
「う、ん……」
サトルが目を覚ますと記憶に新しい天井が見える。先程まで風呂場にいたと思ったのだが……背中に伝わるフカフカした感触から、ベッドの上に寝かされているのに気が付く。
「大丈夫でしょうか、勇者様」
寝ているサトルの顔をメレニアが覗き込む。
「俺は……」
「浴場で気を失ってしまったようで……勇者様の異変に気が付く事が出来ず、申し訳ございまっせんでした」
どうやら浴場でメレニアに洗われている最中にのぼせてしまったようだ。なんとも情けない話だ。彼女には無用な心配を掛けたに違いない。
「すまない、そして介抱してくれてありがとうメレニア」
素直に礼の言葉を口にするが、彼女とは目を合わさない。情けなさもあるが、浴場での恥ずかしさもあるからだ。そしてごゆっくりお休みくださいと言い残し、メレニアは部屋から出て行った。
その後サトルは何も考えず、目を瞑りそのまま夢の中へと逃避した。
◇◇◇
翌日、日の光をまぶたごしに感じて目が覚める。起き上がるとすでにメレニアが部屋のカーテンを開けている最中だった。起きたサトルに気が付いた彼女がこちらに向き直る。
「おはようございます。ノックをしたのですがまだお休みのようでしたので、勝手ながらお部屋に入らせて頂きました。申し訳ございません」
「ああ、いや、気にしないでくれ」
スマホのアラームも目覚まし時計もないのであれば、恐らくどこまでも惰眠を貪っていたことだろう。そう言った文明の利器もなしに決まった時間に起きることが出来るのは、サトルからすると素直に尊敬出来る。
半覚醒の頭でベッドから起き上がり、今にも閉じそうな目を擦りながら部屋に備え付けられている椅子に座る。
「後程朝食をお持ち致しますね。その後は少し休んで頂いて、模擬戦が行われます」
模擬戦か……正直ただただ不安だ。今まで戦いなど無縁の世界で、荒事など無縁の生活をしてきた。異世界物語だと大体不思議な力で主人公は最初から強いが……
アブラハム王や相談役のサラディはウェポンマスターと言うスキルが素晴らしいと言う話をしていた。名前からその効果を予測するとどんな武器でも扱う事とが出来ると言う効果だろうか。
今は全く想像することは出来ないが、武器を持つことでその効果を実感することが出来るかもしれない。昨日情けない所をメレニアに見せてしまったが、今日の模擬戦で名誉挽回といこう!
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