第6話


 メレニアに案内された部屋は……とにかく豪華だった。そう言った知識に乏しいサトルでさえも、その部屋に置かれた家具や調度品の数々は高価であるだろうと言うことが、ひしひしと伝わってくる。


 いつもの不思議な発見をさせてくれる某番組で王族が使った部屋と紹介されても違和感ないような部屋だった。これがスペシャルゲストである、異世界からの勇者を迎えるに相応しい客室なのだろう。


 だが、サトルとしては逆に落ち着かない。豪華な調度品を壊せばどれ程の弁償額が発生するのだろうか、少しでも汚すとどうなってしまうのだろうかと心配になって部屋に入ったはいいものの、身動きできずにいた。


「上着をお預かり致します」


 そう言ってメレニアがサトルの隣に立つ。整った可愛らしいさの成分が多めのメレニアの顔が急に近くに出現してドギマギするサトル。決して全く女性への免疫がないわけではない。


 しかし、これ程魅力溢れた女性はテレビや雑誌の向こう側でしか見たことがない。


 サトルは学ランのボタンに手を掛ける。その時、一つの疑問に辿り着いた。


「俺の荷物とかは?」


 朝の通学でスクールバッグを持っていたはずだ。そしてよくよく思い出してみると召喚されたときにはそう言った手荷物はなかった。次は学生服のポケットというポケットをまさぐってみる。


 しかし、入れておいたスマホどころか、ティッシュやハンカチすら見つからない。身に着けていたであろう小物や手荷物が一切合切紛失してしまっているのだ。


「如何致しましたか?」


 必死になってポケット弄っていたサトルを心配そうな表情で見つめるメレニア。


「あ、いや……何でもないんだ」


 サトルはボタンを外し、脱いだ上着を彼女に手渡す。メレニアは丁寧に上着をたたみ、ベッド横の棚の上に置いた。


「それでは後程お食事を届けに参ります。それまでどうかごゆるりとお休みください」


 深く頭を下げ、メレニアは部屋を出て行った。召喚されてからそう時間は立っていないだろうが、久々に一人になれたことに安堵する。そしてなくなってしまった持ち物に関して思いを馳せる。


 スクールバッグはまぁどうせろくなものは入っていないから別段困ることもない。しかし、スマホが無いのは落ち着かないな……


 最早体の一部と言っても過言ではない、現代人にとっての必需品スマートフォン。それが無いと言うのはなんとも落ち着かない。どうせこちらに持ってこれていたとしても、すぐに充電切れによってプラスチックの塊になるだけなのだが。


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