第40話


 自分から聞いたことだったが、少し無神経なことを聞いたのではとサトルは思う。だが、これから生き残るためには、殺さないとならない場面がでてくるだろう。


 そんな場面に出くわして、今回のように迷っていれば命がいくつあっても足りない。


「嫌なことを聞くのね」

「い、いやすまない」

「躊躇いがないと言えば嘘になる。でも、サトルは分かってるはずよ。貴方がいた世界がどんな世界だったかはわからないけど、やられないとやられるだけなのよ」


 彼女の表情は真剣そのものだった。


「殺すことに迷う以前に、私は死にたくないし、あの時サトルにも死んでほしくはなかった。その解決方法が彼を殺すしかなったからそうした……ただそれだけ」


 息絶え、もう動くことのない騎士を見やり、マリーはそう答える。


 殺すことは最終手段ではあるが、この世界には他の選択がすくな過ぎる故に、そうした。ただそれだけの事だと彼女は言う。


 ならば……


「俺は自分自身のために誰かを犠牲にするなんてきっと迷うと思う……でも、最後にその選択が君を、マリーを助けることに繋がるなら、俺は迷わない」


 まだ出会ってから時間は立っていない、助けられた恩と、マリーの理不尽な境遇に同情しているだけかもしれない。でも彼女のためなら、自分は変われるんではないかとサトルは思った。


「ふふふ、まるで愛の告白みたいね」

「え、いやその……」


 サトルにはまるでそんな意識はなかったが、彼女に指摘されて、自分がそうとしか取れないような発言をしたことに気恥ずかしくなった。


「私のこと……最後まで守ってね。勇者様」


 マリーはサトルの手を取って、少しおどけるように笑って魅せた。


第二章 勇者の決意 完

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