第51話


 マリーが戦う意思を表明する中、サトルは自分の中にあるモヤモヤとした感情に向き合っていた。彼女がどこか遠い所に行ってしまうような、そんな漠然とした寂しさ。


 マリーと知り合ってそれ程時間は経ってはいないが、彼女の境遇とこちらに来てからの自分の境遇を重ね合わせ、同じ敵を持ち、ピンチを脱したことにより、サトルが今まで付き合って来たどの友人知人よりも濃い時間を過ごした。


 身がすくみ、王国騎士にただ殺されるだけの自分を助けてもらった。川辺に流れ着いた自分を救ってくれた。


 そう言った単純に救ってもらった恩を返したい。それだけではない自分の気持ちがあることにサトルは気が付いた。


「ニーア……俺も仲間に加えてくれないか」


 きっと彼女の言う通り過ごしていれば、そう簡単に死ぬようなことは無いのかもしれない。でも、サトルはただ流されるように生き、口を開けた雛のように非日常を待ち、つまらないと吐き捨ててきた十七年間の中で初めて人生の分岐点ともいえる決断を自分で行った。


「無理ね」


 そんなサトルの心情など知らぬと、ニーアは切り捨てる。彼女が言っていることももっともだ。イントルーダーにとっての任務とは、サトルの保護。


 メロベキア王国が次の勇者を呼べない様にするため、王国の魔の手が届かないところで生かし続けることだ。


 そんなサトルを戦いの場所に出すなど、本末転倒でしかない。それに加え、彼女はサトルの力を見ている。


 役立たずを起用する程、イントルーダーは切羽詰まっていない。

 それでも……


「実は、俺のスキルがどんなものかが分かった。これを活かせば、必ず役に立てると思う」


 ニーアは少しばかり驚きの表情を浮かべた。


「絶対に反対。と、言いたいところだけど……話だけでも聞いてみようかしら」


 どうやら彼女はサトルのスキルに関して興味を持ってくれたようだ。

 サトルは没落村での体験を踏まえて、ニーアにスキルの概要に関して話した。


「ふーん。それが本当だったら、模擬戦の時に何もできなかったことには納得できるわね」


 王城で行われた騎士団長アラダインとの模擬戦。あれは本当にひどいものだった。アラダインがただの木偶を叩いただけの面白みも何もない見世物だった。


「つまりサトルのスキルの強さは持つ武器で大きく変わるってことよね」

「あ、ああそうだと思う」

「じゃぁアレを試してみてもいいかもしれない……」


 意味ありげな表情を浮かべ、ニーアはサトルを見た。


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