第47話


「盗賊なんてニーア達には相手にもならないんじゃないのか?」


 素直にニーアへと疑問をぶつけてみるサトル。


「まぁね。でも厄介なのは後処理ね。盗賊達の死体なんていちいち処理してられないし、放置すればそのまま痕跡になる。それに何かの間違いで馬がやられるとメロベキアの領地内で立ち往生することになるわ。そんなことは絶対避けたい事態ね」


「なるほど。でも帰らずの森って危険なんじゃないのか?」

「私も噂しか聞いたことがないけど……踏み入れたが最後、誰も帰ったことがないって聞いたことがあるわ。子供が言うことを聞かないときの脅し文句とも聞くけど……」


「帰る者がいないのは半分本当で半分嘘ね。ここは私達の隠れ家の一つなのよ。下手に踏み入ってそれを知ってしまえば私達が返さない。だから安心してね。だけど私から離れたらどうなるかわからないから、死にたくなければちゃんとついて来てね」


 一寸先の闇に恐怖するサトル。そんな噂話など、人が話の種にするための物だとばかり思っていたが、真実を含めて知ってしまうと逆に恐くなる。


 これは人間こそが最恐と言う話なのだろうか。


 サトルとマリーはニーアからなるべき離れないようにして、森の中へと入って行く。

 散々脅され、手でも繋いでおけばいいのではと提案したかったが、気恥ずかしさのために言い出すことはできなかった。


 野生動物達の気配か、夜の森だと言うのに思った以上の騒々しさを感じるサトル。


 そんな彼らの一挙手一投足に身をブルッと震わせるサトルに、前を行くニーアは少し肩を揺らす。


 間違いない、ビビるサトルを笑っているのだ。


 そんな森の中をどれくらい歩いただろうか、ひたすら歩きづらい森の道を進んでいくと、少し広い空間に出た。そこには小さな小屋が三つほどが立ち並ぶ広場であった。


「ここが隠れ家か」


 ランタンが吊り下げられているが、それでも帰らずの森の中でも心許ない光源だと言える。


「えらく暗いな」

「そりゃね。森の深くだとは言っても、明かりは人がいることの明確な証拠だからね。さぁこっちへ来て、皆に紹介しないとね」


 そう言ってニーアは三つある小屋の内、一番大きい小屋へとサトルとマリーを誘った。


「リーダー! お疲れ様です!」


 扉を開くやいなや、元気な声が響く。


「うるさいよサロメ。お客さんがビックリするじゃない」

「す、すいやせん」


 黒髪を短く刈った少年サロメはお調子者が如くニーアに頭を下げ、こちらに視線を向ける。そしてサトルを見た瞬間に酷く睨み付けてくる。


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