第5話 父さん、ごめんなさい
父さんは中学生の時、クラスのアイドルだった母に一目惚れして、ずっと好きで告白し続けて、卒業するときやっと付き合うことになったんだよ、と笑って言った。母はそうそうしつこかったよねえ、と言った。
「お父さんあの大学の付属高校に合格しただろ?だからみほさん、付き合ってくれたんだよ。お前も頑張っていい高校に入れば好きな子と結婚できるよ」と後で2人になったとき、父さんは言った。
僕は結婚なんて気持ち悪くてしたくないと思ったし、可哀想な父さん、と思った。僕はもう知っていたから。まだ10歳だったけど、わかってた。母という女がどんな生き物なのかを。
以前父さんと一緒に食事をさせてくれた父さんの幼馴染のかおりさんは、たまに会うと嬉しそうにいろんな話をしてくれた。この前スーパーでばったり会った時、これから父さんも来るから直人くんもおいでと家に誘ってくれた。僕はもう5年生になっていて、少しは男女のことも解りかけてきたからなんだか嫌だったけど、いいからいいからと押し切られ、かおりさんの家に着いた。
着いてみて、僕は驚いた。かおりさんの家には、父さんと、もう一人男の人がいた。「おーこれがお前の息子かあ、似てるじゃんかよ」とその大柄の男は言った。
「こいつも俺の幼馴染だ。義之さんだ。今度かおりと結婚するんだよ」
僕は、父さんに申し訳ない気持ちになった。かおりさんと父さんは本当に仲の良い友達同士だったんだ。なのに僕は変なことを想像して、父さんに少し、嫌な感情を抱いていた。ごめん、父さん。
ごめん。
僕の心は汚れてしまってる。
あの女のせいだ。
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