第19話 飛行機じゃない理由
助けて、、、。助けてよ父さん、、、
ぐるぐるする。ぐるぐるぐるぐるする。
気がつくと僕は、脱衣所のベンチに寝かされていた。下半身にはタオルが巻かれていた。
「お!直人!大丈夫か?お前には熱かったんだな。ごめんな気がつかなくて。お前湯あたりしちゃって倒れたからさ、心配したよ。なんか飲むか?」
僕がうなづくと田上はポカリスエットの缶を渡してきた。
「これが一番いいらしいよ。俺もよく頭痛くなるんだけどさ、家ではいつもこれ飲めって言われて、飲むと大体治るからさ」
「ありがとう」
またこいつに礼を言ってしまった。でも、どうしてもこのおっさんを憎めない僕がいる。この人は、悪い人ではない気がする。いや、何を考えてるんだ僕は。悪いやつに決まってる。父さんを騙して奥さんを裏切ってここにいるんだぞ、こいつは。
と、田上の携帯が鳴った。
「どしたー?うん、いま?竹瓦温泉。そーあのピンク街の!来たよねー、一昨年、理沙子と。ごめんな、今日は一人で来ちゃって。うん、順調。雨も降らないし、楽しんでるよ。バイクにするんだったよ。ありがとな。また連絡しまーす。はーい」
「あの、、、奥さんですか?」
頭ぐるぐるだったからか不意に聞いてしまった。
「あー。うん。お母さんにはいうなよ。ぶちぎれてめんどーじゃん?」
と、田上は、笑った。
ぐるぐるの僕は、思わず聞いていた。
「なんで車で来たんですか?」
「だってお前くるって言うんだもん、何かと必要じゃん?」
田上は〝ナニカト〟と言うフレーズにいやらしいアクセントをつけて答えた。
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