第45話 父親

僕の本当のお父さんは

だれなの?


あの女の答えは、こうだ。

「父親っていうのはね。金を稼いで私とあんたを食わせる義務があるの。だからそーゆー意味ではあんたの父親は石井だよ。で?にゃとが聞いてるのは、生物学的な、ってこと?それはねえ」

ここまで話すと、この女は僕をみてニヤニヤしながら言った。


「子供ってどうすればできるか、もう知ってるでしょ?にゃとももう15歳だもんねえ。息子にこんな話したくないけどさ、男と女がセックスすればタイミングでできちゃうんだよね、子供って。にゃと、考えてみてよ。セックスすればできちゃうんだよ?だからさ、わかるわけないでしょ、だれが父親かなんてさ。もしかしたら石井かも?っても思ったけどさ、あたし念のため血液型詐称してて、ホントはあたしはA型なの。石井はABって信じてるけどね。で、石井もA型。だから、B型のあんたは生まれるはずなかったってわけよ。だから、誰かはわかんないけど、石井じゃないってことだけは確かだよ。」


僕は、この女から生まれた僕という存在自体を呪った。


「出かけてくる」


玄関を出てどこをどう歩いたかも覚えていない。とにかく死のう、それしか考えていなかった。

「あぶねーぞー!馬鹿野郎!」と、トラック運転手に怒鳴られて、自分が車道を歩いていることに気がついた。その瞬間ずきっと右のふくらはぎが痛んで、見ると血が出ていた。何で怪我したのかもわからなかった。

死のう、死のう、死のう。


頭の中にはそれしか、なかった。

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