第46話 救い
気がついた時、俺はあったかい毛布にくるまれて、居心地の良い部屋に一人でいた。
ここはどこだろう?
全然わからなかった。
でも、この部屋の心地よさが、どこだかわからない場所に一人でいる恐怖に勝っていた。
視界がぼやけている。頭もズキズキする。
俺は、石井直人。15歳。中3。うん、生きてる。足が痛いとか頭が痛いとかちゃんと感じてる。そうだよな、死ななかったんだ。死にたかったけど、死ななかった。
あ、
そうだ、俺は、誰が父親かわかんないんだった。今まで父さんだと思ってた大好きなあの人は、赤の他人だった。おじいちゃんもおばあちゃんも、赤の他人。
唯一の、俺の肉親は、あのきちがい女だけなんだってさ。ウケる。ムリだわまじで。ムリ。絶対に、二度とあの女にだけは会いたくない。
でも、この気弱で、ビョーキで、醜くて、友達もいなくて、最近は成績も悪い、こんな俺に、何ができる?死ぬ以外、何が?
やっぱ死ぬしかないんだ。
でもここはどこだっけ?俺は、何をしてるんだっけ?とにかく、死なないとだ。死ねる場所へ行こう。こんな居心地の良い部屋にいたら、死ぬ気が失せる。死ぬ気が失せる?笑える。人間は居心地がいいと、死ぬ気も失せるのか?あ、俺がバカだから、きちがいだからそう思うのか。本当に何を考えててももうただ自分に呆れて涙も出ない。笑えてくる。自分という存在の絶望的な嫌悪感に、全身がふるえながら、なぜだかもう、笑えてくる。
ぼやけた頭でそんなことを考ていると、だんだん視界がはっきりしてきて、自分が転がっているソファの目の前のテーブルの上に、湯気の上がった美味しそうな出来立てのサンドイッチとコーヒーが見えてきた。
お腹が大きな音をさせてぐぅとなった。
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