第9話 3つのベッド
気がつくと目の前に大きなフェリーが止まっていて、僕が乗せられた小洒落た黒いオープンカーの屋根は自動で閉められ、車の列に沿ってゆっくり乗船していった。
「部屋とってあるからね」
田上が言って前を歩いていく。185センチくらいはある長身で、肩幅が広い。繊細な感じのする父さんとは正反対のタイプだ。僕はこういうスポーツマンタイプの男が大嫌いだ。なんだか臭い気がするし、体育会系の上から目線の物言いも鼻に付く。なんなんだよお前は母のなんなんだ?と、口から出そうになりながらも僕は無言で歩いた。
船の中とは思えない広さのある部屋には二つのベッドとソファベッドがあった。
「おじさんはソファベッドに寝るから、直人くんはベッド使いな」と言ってゴロンと横になったかと思うと、田上はすぐにスヤスヤと寝息を立て始めた。母は当たり前のようにベッドに荷物を置くと「仕事忙しいから疲れてるんだってさ。にゃと、船の中探検しない?」という。
「だから、俺、体調悪いんだってば!」
流石に大きな声を出してしまった。もう何もかもどうでもよくなってきて、何も考えたくなくなった。このおっさんと同じ部屋で眠るのも嫌だが、子供の僕にはどうしようもなかった。急にまた睡魔が襲ってきて、僕は悪夢の中へと落ちていった。
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