第24話 険悪な夫婦たち
あれから2年経った。僕は中学生になった。
2018年夏。
僕の母は妊娠した。
7月の後半のある日家に帰ると母がすぐ支度をしろと言う。なんだよと言ったら、小遣いやるからこれから付き合え、父さんには何も言うな、と言った。
あの、小5の夏の旅行以来、僕は吃音になったこともあって母とはほとんど話さなくなっていた。ただ、なぜだか学校にいる間はほとんど出なかったので、人並みに友達もできて、僕は中学生活を満喫しようと心に決めた。母のことは関わらなければ済む話で、母がどんな女であろうが僕の人生には全く関係ない。と、思えるまでになっていた。
むしろ、中学生の僕はすでに〝出会い系サイト〟がなんなのかもわかっていたし、母がかけた携帯のロックを外すのも簡単なことで、そこに残された不潔でいやらしくて下品極まりない男たちと母とのやりとりを、たまにのぞいてはまるで小説を読むみたいな気持ちで楽しんでさえいた。母は僕が勝手に携帯を見ていることを知ってか知らずか、よくソファに放り出して昼寝をしている。相変わらずあの女は仕事と称して家にはほとんどおらず、たまにいてもソファで寝ていた。僕は父方の祖父母の家に入り浸り、美味しい手作りご飯を食べさせてもらって、心の安定をはかっていた。
父さんはというと、やはり家にはほとんど帰らなかった。でも明け方には必ず帰って家のどこかでは寝ていて、僕を見ると必ずおはよう、と言ってくれた。起きたら父さんが朝いない、という事だけはなかった。
それだけは避けている、といった風に。
父と母は常に険悪な空気だったが、
祖父母や友人たちの前では前の通りとても仲良く振舞っていた。中学からの同級生ということもあってか、その様子はとても自然で、二人の中を疑う大人は周囲に誰もいなかった。
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