第33話 運命のクリスマス

2018年12月24日。

父さんの帰らないクリスマス。僕は母に無理やり連れられて出た渋谷で、待っていた田上とカラオケをした。そのあと、2人が作っていた〝秘密の部屋〟へ連れていかれた。うちから二駅先の駅から徒歩5分くらいの、小さな部屋だった。あの、母が堕胎した子供の代わりに田上にせがんだあの部屋だ。2人からクリスマスだからとスニーカーを渡された。欲しかったやつだから、まあいいか。


そして、運命の、12月27日。深夜。


田上の方から母に、珍しく電話があり、それからしばらくして、すごい形相の田上が来た。父さんと暮らしたこの家に、来た。僕は何事か会ったことを察知した。

「全部バレてた。理沙子が出ていった。さっき家に帰ったらあいつが大切にしてたものだけが無くなってて、手紙があった。もうおしまいだ」

「手紙?見せてよ!」

「見せるわけねーだろ!」

「なんて書いてあったの?」

「弁護士から連絡させる、って」

「なんでよ!何やってんのよ!なんでバレたのよ!どーしてくれんのよ!」

「お前のせいだろ?夏から朝も夜もなく電話してきやがって!あの部屋も無理やり借りさせやがって、入り浸るようになったのも全部お前のせいだろがよ!」

「とにかく私は慰謝料とか無理だからね!絶対払わない!あんたのせいだからあんたがなんとかしなさいよね!」

「石井みほさんとの不貞関係について把握してるので弁護士から連絡させるって、はっきり書いてあったよ!お前もにげらんねーよ!」

「私は離婚はしない!にゃとがいるんだよ。あんたがなんとかしなさいよあんたの嫁でしょ」

「もうおしまいだよ。俺もお前も。あとは慰謝料の値切り方でも調べておくんだな」

「待ってよ!離婚になったら責任とってよ」

「知るかよ!とにかく俺は二度とお前には会いたくないわ。俺の人生ぶち壊しやがって。あの部屋は俺の名義で借りてるから俺、使うわ。鍵よこせよ。二度とくんなよ。」

「は?だってあの部屋は私もお金だして」

「てめー、うちの理沙子のふりして契約書書いただろ?あれ公文書偽造だからな?なんなら俺からも訴えるぞ!ほらはやく鍵出せや!二度と連絡もしてくんなよ!慰謝料の金額増えたらシャレになんねーからな!」


田上は泣き叫ぶ母から鍵をもぎ取ると、これから離婚の条件に不利になるだけだから、母とは二度と会わないと何度も言いながらすがりつく母を蹴ったり殴ったりした。

それから、これで何もかもおしまいだ!と叫びながら出ていった。

僕は、なぜか僕は、その壮絶な別れの有様を、ニヤニヤしながら眺めていた。

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