第2話 僕と父さんと女の人と

父さんの帰りが遅くなる日が増えたある日、僕は見た。知らない女の人とスーパーで買い物してる父さんを。父さん!と声をかけると一瞬驚いた顔をしたが父さんと女の人は笑顔で僕の方にやってきた。


「直人くんかー!確かに似てるねあの頃のイッシーに。はじめまして私、お父さんと幼馴染なのよ」すごく明るい笑顔を見て、まだ子供だった僕はなんだか嬉しくなった。それからその人のうちに父さんと一緒に行って手料理をご馳走になった。その人はとても料理上手で、僕は父さんとうまいうまいといつもの倍以上たくさん食べた。父さんはずっと、幸せそうだった。


帰り道で父さんは言った。

「母さんには言うなよ」


僕はどきっとした。母に秘密を持つのは初めてだった。父さんの真剣な目を見てもう一度、どきっとした。


家に着くと母が怒鳴ってる声が聞こえた。「あんたが悪いんでしょ?今からそっち行こうか?」僕と父さんがリビングに入ると、母は慌てて電話を切った。「え?なに?なんで2人一緒に帰ってくるの?ご飯とかないけど?」明らかに不機嫌に言ったので、僕はできるだけ明るく「父さんとばったり会ったからマック行ってきたよ」と言って部屋へ入った。リビングから父さんがなにかを怒鳴る声がしたけど聞き取れなかった。


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