第63話 田上の婆さん
田上の母親だという女が家にやってきた。
まるで汚いものでも見るように、あの女と俺を交互に見ながら何度も何度もため息をついた。
「絶対来ないんじゃなかったのかよ」
「そりゃあんたがダブル不倫してた相手とまさか再婚するなんて思わなかったし、理沙子さんやそのご家族に私は一生顔向けできないよ。理沙子さんのお母様とは同じ街に住んでたのに。この歳のあたしに今更引っ越しまでせざるをえないような事を弟の誠司ならともかくあんたがするなんてね。しかも50になるってのに今さら父親になるだ???どのツラ下げてこんなことができるのかね。あんた理沙子さんに申し訳ないと思わないの?人間の心は捨てたのかい?」
「母親のくせにやめてくれよ。嬉しいだろう?俺に子供できたんだぜ!やっと母さんに俺の子供見せられるんだよ。」
「ねえ、あんた、名前は、、、ま、いいやあたしはもう二度とあんたらには会いにきませんから。今日はただ、見に来たんだよ。元の夫や妻の暮らしをぶち壊しにして自分達だけ幸せになろうとしてるあんたたちみたいな人間が、いったいどんな暮らしをしてるのかをね。入れ物だけは立派なこんな新築住宅なんか買う金がどこにあったのかねえ?2人とも慰謝料ですっからかんじゃなかったのかい?おそろしいよ、我が子ながら。本当に怖いよ、この女は。私はね、金輪際、あんたらとは親子の縁を切るってことを言いに来た。それから生まれてくるその腹にいる子は、私には一切関係のない子供だから。お前不安じゃないのかい?本当にお前の子かどうか。」
「母さんいい加減にしろよ」
すると、黙ってぼーっとした顔で婆さんの話を聞いていたあの女がこう言った。
「言いたいことはそれだけか?おわった?じゃ出てけよばばあ。ここはあんたに関係ないあたしらの家なんですけどお」
婆さんは奇声を発して飛び上がると、何かなんて言ったのかわからない言葉を叫んで、玄関から走るように出ていった。
あの女の笑い声だけがリビングに響いていた。
僕のお母さんはW不倫して略奪結婚した らららろろろ @maggyharry
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