第62話 穢れた妊娠
珍しくあの女がキッチンに立っている。
不思議だな、と思った朝だった。
俺は相変わらず目に力が入らなくなったままで、目に映るものに対して何も感じない何も考えない日々を送っていた。
だから見ていても何もわかっていなかった。
この3ヶ月、あの女はほとんど家にいた。
夫婦の寝室から出てくることはほとんどなかったが、家から出て行った様子は全くなく、たまにトイレやリビングで見かけた。
そしてあの男も家にいた。
最近では何で稼いでいるのかわからないが、あの男もほとんど家から出なかった。つまり、あの2人はずっと、家にいた。
キッチンに立っている様子を見て、少しずつ、俺にも真実が少しずつ理解できてきた。そこにいるのは、痩せ細って目ばかりぎょろぎょろさせた、気持ちの悪い母親の姿だった。
田上が言った。
「おいにゃとくん!よかったな、お前、お兄ちゃんになるんだぜ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます